閉経までの不規則な月経は止めてしまってもいいの? 月経コントロール方法の選択肢を解説【我慢しないで快適に過ごす、閉経への道 ④】
【教えてくれたのは】 松峯寿美さん 東峯婦人クリニック名誉院長。日本産婦人科学会専門医。医学博士。妊娠・出産はもちろん、思春期、更年期、老年期の女性に寄り添い、40年以上診療を続けている。著書に『婦人科医が不安と疑問にやさしく答える 更年期の処方箋』(ナツメ社)、『50歳からの婦人科 こころとからだのセルフケア』(高橋書店)など多数。
閉経は遅いほうがいいけれど、止めたければ止めてもいいんです
「閉経前の月経不順や月経過多に悩んでいる方に『もう月経を止めたい』と言われることは確かにあります。私はずばり、止める処方をします」と話すのは、地域密着型クリニックとして幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行ってきた産婦人科専門医の八田真理子さん。 「特に、重症感が漂っている患者さんには、偽閉経に持ち込むレルミナを処方しますね。使用期間が6カ月、休薬期間が6カ月と決められているので、2カ月ほど飲んで出血が止まったら、3カ月目からは減量する(隔日にしたり半量にしたり)ことも。 ほてり感やのぼせなど、女性ホルモン低下により起こる症状がつらい場合は、漢方薬やサプリメント、抗うつ薬を併用することもありますね。 ただ、偽閉経療法は、実際より早く閉経させてしまうことになります。人生100年時代の今、女性ホルモンが体をめぐっている時間が長いほうが、若々しく元気でいられることは間違いないの。 閉経が遅ければ、女性ホルモンに依存した乳がんや子宮体がん、血栓症などの発症リスクは上がるかもしれない。でも、その心配は検診で早期発見・早期治療を行えば払拭できるはず。そして、実際にホルモンが減った分はホルモン補充療法でカバーできるんです」 あとは、骨粗しょう症の問題だと八田先生。 「実は、男女とも80歳になったら骨粗しょう症になることはもうわかってきてるんです。女性は女性ホルモン・エストロゲンのおかげで骨が保たれているんですけど、それがなくなる閉経後に骨が急に弱くなり始めます。 閉経が早いと骨粗しょう症に早くなるリスクも高くなるので、骨密度の検査と骨粗しょう症対策をすべき。いかに骨量を減らさないかっていうことですね。活動性の高い50代、60代、70代をいかに骨密度を減らさないでいくか、減っていくカーブを少しでも緩やかにしていくかということ。 整形外科の先生方は、閉経後はもうビタミンD活性剤(活性型ビタミンD3製剤)のエディロールなどを飲むべきだと言いますしね。なにしろ日本人はアラブの人の次くらいに日光を浴びないともいわれているくらい。紫外線によって皮膚でつくられるビタミンDが不足しています。カルシウム(骨)代謝を活発にするのがビタミンDなんですが、日本人女性はこのことをもっと真剣に考えてほしいと思っています。 閉経を止めても自然に閉経しても骨粗しょう症は確実に迫ってくること、忘れないでくださいね」
【教えてくれたのは】 八田真理子さん 産婦人科専門医。幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行う地域密着型クリニック「 聖順会 ジュノ・ヴェスタ クリニック八田」院長。著書に『思春期女子のからだと心 Q&A 資料ダウンロード付き』(労働教育センター)、『産婦人科医が教える オトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)ほか。 イラスト/Shutterstock 取材・原文/蓮見則子