【箱根駅伝】青学大が2年連続7度目の往路V 4区「太田劇場」から5区「若乃神」で大逆転!総合連覇に王手
◇第101回東京箱根間往復大学駅伝競走往路 (2日、東京・千代田区大手町読売新聞社前スタート~神奈川・箱根町芦ノ湖ゴール=5区間107・5キロ) 前回総合優勝した青学大が、4区で太田蒼生(4年)が日本人最高タイムの区間賞で3位から2位に浮上し、5区で若林宏樹(4年)が箱根山中で中大を逆転した。2年連続7度目の往路優勝。2年連続8度目の総合優勝へ王手をかけた。 青学大は前回、優勝のゴールテープを切った宇田川瞬矢(3年)が100回大会から101回大会へ自身でタスキをつなぐように1区を務めた。終始、大集団でレースを進め、残り1・1キロで一時、遅れたが、得意のラストスパートで数人を抜き返し、区間賞を獲得した中大の吉居駿恭(3年)と1分44秒差の10位で鶴見中継所に飛び込んだ。 2区は黒田然(1年)が登録されていたが、兄でエースの黒田朝日(3年)が当日変更で2年連続で起用。前回は歴代4位(日本人歴代2位)の1時間6分7秒で区間賞を獲得した実力者は一時は10位から12位に後退したが、終盤に順位をぐんぐんと上げて、首位の中大と49秒差の3位に浮上。従来の区間記録(1時間5分49秒、21年東京国際大・イェゴン・ヴィンセント)と日本人最高記録(1時間5分57秒、20年東洋大・相沢晃)を超える1時間5分44秒で走破。区間賞を獲得した東京国際大のリチャード・エティーリ(2年)、区間2位と激走した創価大の吉田響(4年)には遅れを取ったが、2年連続の快走で7人をごぼう抜きした。 最初で最後の箱根駅伝となった鶴川正也(4年)は区間4位とまずまずの走りで3位をキープした。 そして、ここからが青学大の独壇場となった。原晋監督(57)が「駅伝男」と絶対の信頼を寄せる太田蒼生(4年)が日本人最高記録(1時間30秒、20年青学大・吉田祐也)を超える1時間24秒の圧倒的な区間賞で2位に浮上。さらに首位の中大と45秒差に迫った。1年は3区2位、2年は4区2位、3年時は3区で日本人歴代最高の59分47秒で区間賞を獲得して青学大優勝の立役者に。3年連続の「太田劇場」で逆転Vをお膳立てした。原晋監督(57)はレース前に「4区勝負。4区が鍵になる」と予言。その通りの展開となった。 5区では卒業を区切りに引退する若林が最後の箱根路で力走した。9・5キロで中大の園木大斗(4年)を逆転。今大会で初めてトップに立ち、そのまま、芦ノ湖の往路ゴールに飛び込んだ。 若林の箱根5区に懸ける思いは強かった。1年時から5区を走り、区間3位で優勝メンバーとなった。しかし、2年時は元日に体調不良に陥り、欠場。6区予定だった脇田幸太朗(当時4年)が5区を走り、区間9位。脇田に代わって6区を走った西川魁星(当時4年)が区間20位。青学大は山で苦戦して3位。連覇を逃した。だが、そのまま、終わらなかった。2~3日、静養して回復すると、箱根駅伝翌々日の5日に神奈川県内で20キロ上り坂タイムトライアルを敢行。山への執念で3年時のリベンジにつなげた。 最後の5区へ絶好調で臨んだ。昨年11月23日のMARCH対抗戦1万メートルで27分59秒53と大台を突破した。山のスペシャリストはトラックでも学生トップクラスのスピードを誇るが、卒業を機に競技の第一線から退き、国内最大手の生命保険会社「日本生命保険相互会社」に一般の新入社員として就職が内定している。日本学生陸上界において、1万メートル27分台の自己ベストを持ちながら大学卒業を区切りに引退する初の選手となる。「実業団で競技を続けることを考えた時期もありましたが、3年生の時に、陸上は大学まで、と決断しました。中学生の頃から箱根駅伝が一番の目標だったからです」と、きっぱり話す。 若林は後輩だけではなく同期からも「若さま」「若さん」と呼ばれ、一目、置かれる存在だ。原監督は1年時に「若の神」の愛称を授けた。4年で3度、往路のゴールテープを切る偉業を果たした若林を「横綱のような『若乃神』になりました」と最大限の賛辞を送った。 今季、学生3大駅伝開幕戦の出雲駅伝(昨年10月14日)、第2戦の全日本大学駅伝(昨年11月3日)はいずれも国学院大が優勝、駒大が2位、青学大が3位だった。しかし、得意の箱根路では、やはり、強い。原監督は今大会に向けて「あいたいね大作戦」を発令。「優勝にあいたい。優勝してみんなで喜びあいたい」と話す。往路の時点で、原監督は「あいたいね指数は99・9%です。復路で100%を超えますよ」と胸を張って話す。 復路にも6区で前回2位の野村昭夢(4年)、8区区間賞の塩出翔太(3年)ら実力を残す。大学卒業後には地元の福井県のテレビ局「福井放送」にアナウンサーとして就職する主将の田中悠登(4年)も万全の状態で備えている。 5区途中まで、1万メートル平均タイムがトップの中大に遅れを取ったが、往路が終わってみれば青学大の強さが際立った。 「速い」より「強い」。それが箱根路の王者になる条件である。
報知新聞社