「リッチモンドホテル」でロイホやシズラーが食べられる理由とは? 人気ビジホが誇る「確かな美味しさ」と「個性あふれるメニュー」のルーツを探る
朝食に日本酒とは、いったい誰が考えたのか。尋ねると、「ご当地メニューは、各ホテルの社員とアルバイトのアイデアを取り入れて、スーパーバイザーを中心に本部のチーフコックが考案しています」との答え。なるほど、現場の声が個性を生んでいるのだ。 そのほかにも、なんば大国町のリッチモンドではたこ焼き、串カツ、どて煮、肉吸い。浅草では、生オレンジにストローを刺して提供する搾りたてジュースにローストビーフと、各ホテルの個性が際立つ。
これらのメニューのうち、ベーシックで共通する料理はセントラルキッチンで製造するが、ご当地メニューは各ホテル内のキッチンで調理している。 ただ、そこで提供する食材や調理工程には、安心安全とおいしさの観点から、厳格なルールが何十も整えられているため、準備にはかなりの労力と手間暇がかかっているそうだ。 宗像氏は、「正直大変ですが、『お客さまに美味しく食べていただくためにはこれが必要なんだ』という想いが企業文化としてあり、当然だと思っています」と笑顔を見せた。
その言葉を裏付けるのが、2023年に6ホテルで行われたレストランの改装だ。キッチンを中央に設置、鉄板を入れるなど、ライブキッチン仕様に変更が行われた。早速、広島・福山はお好み焼き、宇都宮は餃子など、鉄板で焼き上げるメニューを増やしている。リッチモンドの朝食は、さらなる進化を続けているのだ。 ■なぜ、そこまで朝食にこだわるのか 筆者は15年以上ホテルを取材しているが、グループで半分以上のメニューが異なるほど、朝食にこだわるビジネスホテルは記憶にない。なにがリッチモンドをそこまで駆り立てるのだろう。
「ひとえに差別化のためです。宿泊特化型ホテルは、客室やサービスにほとんど差がありません。リッチモンドの客室フォーマットはシングルで18㎡、140cm幅のベッド、広々としたデスク周りです。開業当初はそんなビジネスホテルはありませんでした。 ですが、いつしかそれが業界標準になり、ハード面の優位性がなくなったのです。だからこそ私たちは、朝食の重要性が高いと認識しています」 客室に差がないならば、何で優位性を持つか。飲食にルーツがあるホテルだからこそ、食とサービスで差別化を図ろう、と考えたのだ。宗像氏は、自身も言葉を噛みしめるように、「リッチモンドにとって、食は切っても切り離せない命綱のようなもの。私たちは、食と人の価値をどう提供していくかで勝負しています」とその決意を語った。