「紀州のドン・ファン」の右腕とゴーストライターが感じた、早貴被告証言への強烈な違和感
■ 早貴被告から離婚を切り出した? 野崎氏が早貴被告との離婚をどれほど真剣に考えていたかも裁判のポイントとなっている。検察側は冒頭陳述で「完全犯罪で莫大(ばくだい)な遺産を得ようとした」と指摘し、野崎氏から離婚され得る状況だったことが動機の形成につながったとしている。 これに沿うように、野崎氏が経営するアプリコの元従業員たちは「結婚後間もなく社長は被告の態度に不満を示し、『離婚する』と漏らすようになった」と口をそろえている。 ところがこの点について早貴被告の話はまったく主客が反対なのだ。 早貴被告は、こう述べた。2018年5月上旬、田辺市で同居するよう迫る野崎さんに、「一緒に住まない約束を守れないなら、もう結婚生活を続けられません。離婚します」と電話で告げたところ、「帰ってきてください」と野崎氏から頼まれたというのだ。 この証言についてマコやんが言う。 「いやいや、それは違う。18年のゴールデンウィークに北海道に帰省すると言っていた早貴被告がなかなか田辺に帰ってこないので、社長が激怒して『離婚する』と言ったのが本当です。それで彼女はGW最中だった5月3日に慌てて田辺に帰ってきたんです。彼女の話は真逆ですし、そもそも『一緒に住まない』などという条件が無いのですから……」 証人として出廷した前妻Cさんは法廷で「おはよう、おやすみの感覚で『離婚したい』という人だった」として、「話がコロコロ変わるのでコロちゃんと呼んでいた」と振り返っていたことは以前お伝えした。 早貴被告は、これについてもこう話した。 「コロちゃんまんまだなと。それが社長の習性というか、性格なんだなと思いました」「(証人尋問では)従業員が口をそろえて私が社長に冷たかったみたいなことを言っていますが、全然そんなことはありません」
■ 早貴被告の話とは裏腹、周囲の人間は誰も感じていなかった「自殺」の兆候 そして社長の異変にも言及した。5月6日に愛犬イブが死ぬと、「死にたい」と口にするようになったというのだ。 「最初はかまってほしくて言っているんだろうなと思いましたが、泣きながら『死にたい』と言ったこともあり、だんだん本気だなと思い始めました」(早貴被告) 元従業員らは証人尋問で「自殺の前兆はなかった」と述べている。覚醒剤に続きこの点でも早貴被告が語る「紀州のドン・ファン像」は周囲が抱くそれとは異なっている。 吉田氏が言う。 「まず従業員たちの『早貴被告は野崎社長に対して冷たい』という証言は間違っていないと思います。早貴被告がドン・ファンを気遣うような素振りは、近くにいた者たちも一切見ていません。 また愛犬イブが亡くなった後にドン・ファンが『死にたい』発言をしたとのことですが、ドン・ファンには当時付き合い始めたばかりの女性『ミス・ワールド』と結婚したいと言っていたわけですから、『死にたい』と言うことは考えにくい。6月に行われる予定だったイブを偲ぶ会の成功に向けて張り切っていたのですから、早貴被告の作り話のように思えてなりません」