【オーストラリア】【農業通信】豪州の日本酒人気根強く、「サケフェス」大盛況
オーストラリア・シドニーで9月28日から2日間、600品目以上の日本酒や焼酎、果実酒、日本産食品などの利き酒や試食、商談ができるイベント「サケフェスティバル2024」が開催された。オーストラリアでの日本酒人気は引き続き高く、3回目となる今年も前年比約3割増となる約8,000人が来場し、会場は熱気に包まれた。【オセアニア食品農業専門誌ウェルス編集部】 今回のイベントに出展したのは、日本から来豪した酒蔵を含む日本酒専門業者38社のほか、日本食品卸・小売りや飲食店など総勢82団体。また26日には品評会「オーストラリアン・サケ・アワード」の表彰が市内のホテルで行われ、宇都宮酒造(栃木)や亀泉酒造(高知)、今西清兵衛商店(奈良)などが受賞した。今年からフードマッチング部門が新設され、オージービーフのステーキなど、現地の料理に合う日本酒の酒蔵として壺坂酒造(兵庫)や加藤吉平商店(福井)などが選ばれた。 新潟県酒造組合の大平俊治会長は「想像以上の盛り上がり」と述べた。日本の酒蔵が世代交代により若返ったことで「海外進出を視野に入れるようになり、日本酒の良さが認知されてきた」との見方も示した。「上善如水」を展開する白瀧酒造(新潟)の島村いづみ営業主任は、「他国と比べ、オーストラリアの来場者は商品の説明をしっかり聞く印象」と話した。 主催したJAMS.TVの遠藤烈士社長は「オーストラリアの日本酒人気を維持するためには、物流の整備のほか、商品を選びやすくすることが重要」と強調した。多種多様な日本酒が輸入されるようになった現在、消費者が好みの1本を選択するために、販売側が自信を持ってサポートできることが必要とした。 ■酒蔵巡りツアーをアピール 来場者に聞くと日本の酒を飲むきっかけとなったのは日本への旅行だとする人が多い。実際に今年1~5月の訪日オーストラリア人は40万200人に上り、前年同期比72.2%増と好調だ。 こうしたインバウンド需要を狙うのが、清酒発祥の地をうたう奈良県だ。同県を訪問する観光客数は全国5位なものの、宿泊客数や観光消費額は下位に沈む。日帰り観光客に偏重するという課題を解決するため、酒と食を中心とした観光コンテンツをオーストラリア人にアピールした。奈良県酒造組合の北岡篤会長は、「清酒は奈良が発祥地だというイメージを早期に構築し、県内各地の酒蔵を巡るツアーにオーストラリア旅行客を呼び込みたい」と意気込んだ。 ■甘いリキュールも消費者に人気 今回は果実酒などリキュール類の人気の高さが目立った。栄川酒造(福島)の大森加奈子営業課長は「果実酒が即座に売り切れた」と述べ、高橋酒造(熊本)の高橋宏枝常務取締役は「ゆず酒や梅酒の人気が高い。有望市場だと感じている」とした。 また、シドニーの日本食品卸Jun Pacificの梅田博司社長は「ライトな酒を好む層が増えている。今後の商品構成を考えていきたい」と述べた。一方でキッコーマン系列の日本食卸JFCの営業戦略部シニアマネジャーで酒ソムリエでもある稲舟寿彦氏は「一般消費者からの味の濃い果実酒人気が目立つが、飲食店など事業者に対しては本格日本酒の人気も底堅い」と語っている。 ■輸出単価は上昇 日本の財務省貿易統計によると、2023年のオーストラリア向け日本産酒類の輸出額は65億8,300万円で、前年比17.2%増だ。一方で日本酒造組合中央会が今年2月に発表したオーストラリア向け日本酒輸出額は、同年に6億4,459万円と前年を30%下回った。 嗜好(しこう)の多様化と生活コスト高による裁量的支出の減少が影響しているとみられ、「獺祭」を展開する旭酒造(山口)の山森健成氏は「オーストラリアとは過去十数年間取引しているが、直近では高価格品に圧力がかかっている」と述べている。 ただし、23年にオーストラリア向けに輸出された日本酒1リットル当たりの価格は1,212円と、前年比4.8%上昇しプレミア化は進んでいる。