「生徒よりも講師募集のほうが人が集まる」ヨガインストラクターの労働実態 #生活危機
一方、ヨギーの代表取締役副社長の清水圭さんはこう説明する。 「YICは、現代人が安全かつ効果的にできるよう体系化したヨギーヨガのクオリティーを維持し、アップデートするための認定制度です。取得は完全に任意で、認定者ではないヨガインストラクターは、ヨギーヨガ以外のアシュタンガやシヴァナンダといった流派のクラスを担当されています。それまでヨギーでインストラクターをしてきた認定資格取得希望者には複数回の無料の研修が提供されていますし、取得のハードルは低かったものと考えています」 YICを取得すれば、ヨギーヨガをスタジオヨギー以外でも教えることができるようになる。一般の人がYICを取得しようとすれば、数十万円以上の受講料が必要だ。認定試験に合格したあとも、「ポイント」を取得し、1年ごとに更新料を支払い、資格を更新していく。 認定資格を保有しているヨギーのインストラクターの場合は、更新に必要な「ポイント」や手数料は、そうでない人と比べて低く設定されている。 独自の認定資格を作った理由について清水さんは言う。 「それぞれの人生がある中で、自分と向き合ったりまわりとのつながりを大切にしたりするツールとして、ヨガやその価値観を広めたいというのが会社を立ち上げた動機。それを実現するための一つの方法として、インストラクターが経済的にも成り立つようにし、職業として確立したいという思いが認定資格の設立につながっています」 納得がいかなかった塙さんは、2019年4月に仲間のインストラクターとともに「yoggy インストラクターユニオン」を結成し、団体交渉をスタートした。しかし2020年になりコロナ禍が訪れ、スタジオの休業とともに交渉は中断した。6月には営業再開したが、ユニオンの幹部4名がそれぞれ週4~5回のペースで担当していたクラスがすべてなくなった。 塙さんたちは、ヨギーのこの対応について、労働組合活動をしていることを理由に不利益を被らせる「不当労働行為」に当たる可能性があるとして、2020年7月、東京都労働委員会に救済の申し立てを行った。そして、2023年6月、東京都労働委員会は、なくなった担当クラスの一部を復活、その期間で得たはずの報酬の支払い、そして全店舗に謝罪文を掲載することを内容とする一部救済命令を出した。 ただし、ヨギーが削除した幹部たちの担当クラスのうち、ヨギーヨガについては、当初ヨギーが予告したとおり、認定資格取得者以外にヨギーヨガを担当させない方針を実行しただけだということで、不当労働行為に当たらないと判断された。 この結果について塙さんはこう話す。 「認定資格について改善を求めたユニオンの意義を否定する命令は残念でした。ただ、フリーランスで結成した労働組合が認められたことは自信にもなりましたし、一部とはいえ救済命令の内容は嬉しかったので、ここで終わりにしようと思っていました」 しかし、ヨギー側がこの命令に対して再審査を申し立てた。それを受け、塙さんたちもヨギーヨガクラスの復活も含めた救済を求め、再審査を申し立てた。