2025年は不動産マーケットの重大な転機の年になる
賃料が期待通りに上がらない場合はどうなるのか
社会がインフレの状況になって賃料がうなぎ上りになっていけば、物件価格は下がらずに新たに設定した投資利回りを確保できるが、賃料が期待通りに上がらない場合は、投資目線(金額)を下げていかなければならなくなる。 2025年からの不動産マーケットはこの状況を見極める状況にある。大企業を中心として年収は上がる傾向にある。人手不足は全業界共通なので、企業は優秀な人材を確保するためには給与引き上げのみならず、社宅など福利厚生費の充実が求められるようになっている。賃貸マンションの賃料は今後の上昇が期待できるかと思う。 ただし、既存の賃貸住宅のテナント賃料をただちに上げることができるのかと言えば、日本の借地借家法は、借手側に非常に有利な設定になっている。家賃の引上げを大家が要求しても、テナントがこれを拒否(現状の賃料であることを主張)した場合、大家側は賃料引上げについて合理的な理由を提示し、テナントの納得をもらわない限り、値上げを実現できない。つまり、家賃上昇が世の中に広く定着していくにはかなりの時間がかかるということだ。
働く場所はオフィスビルに限らない
またオフィスビルについては、今後賃料を大幅に引き上げることができるかといえば、なかなか厳しいものがある。 その大きな理由は人々の働き方が変化しつつあることだ。コロナ禍を契機に始まったリモートワークは、コロナ禍終息後にオフィスに戻る傾向を強めたものの一部で残り、リアルとリモートを組み合わせたハイブリッド型勤務を採用する企業が増えている。大企業を中心にリアル勤務は週に1、2回という会社はいくらでもある。人が家に住むというビヘイビア(生活様式)は変わらなくても、働く場所が必ずしもオフィスでなくても大丈夫であることを、コロナ禍では図らずも、壮大な社会実験のうえで証明してしまったのだ。 こうした影響で昨今、都心にオープンする大規模オフィスビルのいくつかでは、計画当初に想定していた賃料水準に到底及ばぬ条件で、テナントと契約せざるを得なくなっている事例が後を絶たないという。表面的には高額の賃料条件で契約してもフリーレントを長期間受諾することで、実質の賃料が半額程度になっている物件まで出現しているというのが実態だ。