なぜ立浪監督はついに根尾を勝ちパターンで起用したのか…「さすが」と称賛する制球力と”鉄のハート”でプロ初ホールド
中日の根尾昂投手(22)が1日、バンテリンドームで行われた阪神戦で6試合目にして初めて勝ちパターンで起用されプロ初ホールドをマークした。1-0で迎えた5回2死一、二塁のピンチにワンポイント起用され、27試合連続安打中の近本光司(27)を高橋周平(28)の美技にも助けられサードゴロに打ち取った。立浪和義監督(52)は「さすが」と称賛、今後も勝ちパターンで起用する可能性を示唆した。立浪監督が根尾の投手転向を決断した理由がわかるプロ初ホールドだった。
27試合連続安打中の近本を151キロのストレートで仕留める
ベンチに姿を見せたのは根尾だった。 1-0で迎えた5回二死一、二塁のピンチ。打席には、4回にセンター前ヒットを放ち、27試合連続安打を継続中の阪神打線ではもっとも怖い近本である。立浪監督は根尾にこう言葉を送りマウンドへ送り出す。 「思い切って力勝負してこい。フォアボールで逃げるよりも打たれて1点は構わない」 先発予定だった大野雄が試合前練習を終えてから背中に張りを訴え、先発回避をせざるをえなくなった緊急事態。立浪監督は、中継ぎ陣の中から急遽、藤嶋を代役先発に指名した。その藤嶋は3回を無失点に抑えたが、「さすがに3イニング目は球速も落ちてきた」と、立浪監督は継投策を余儀なくされていた。 4回は福、谷元、5回からは山本を起用したが、先頭の坂本に四球を与え、二死二塁から島田をまた四球で歩かせるなどストライクが入らずに苦しい状況だった。 立浪監督は、四球が続けば交代させようと考えていたようだが、選択肢としては、清水、森、根尾の3人しかなかった。清水を送り出すには、まだ早い。 立浪監督は「相手は近本選手。こっちも打たれることは覚悟で出している」と、根尾の制球力と球威、そして何より大阪桐蔭高時代にセンバツ甲子園で2年連続胴上げ投手となった、その修羅場をくぐり抜けてきた“鉄のハート“に賭けたのである。近本のバットコントロールを考えると小手先の変化球では通用しない。 「クリーンナップにどれだけできるか試したかった」と、6月25日の阪神戦では4番の佐藤から始まる打線に根尾をぶつけていた。 1点を失ったものの、そこでも制球が乱れて自滅することのなかった根尾に、敗戦処理から勝ちパターンへの昇格起用の手応えを感じていたのかもしれない。 登板6試合目にして初めて大差の敗戦処理ではなく勝ちゲームの緊迫した場面でマウンドに上がった根尾は、さらに集中力が増したかのようだった。 初球は外角低めに149キロのストレート。ボール判定となったが素晴らしいボールだった。2球目はインサイドへスライダー。予期せぬ球種に近本のバットは空を切った。 そして運命の3球目。インハイの151キロのストレートに近本は、思わず反応した。ストレートに絞っていたのだろう。その難しいボールに手を出した。流し打ったわけではなく、根尾の球威に押し込まれるようにして、打たされた打球は、三遊間へ。だが、高橋周が横っ飛びしてキャッチするスーパープレー。すぐさまセカンドへボールを送球して一塁走者をフォースアウトにした。 ホームベースカバーに走っていた根尾は、ガッツポーズを作って雄叫びをあげた。ベンチ前でグラブを叩きながらピンチを救ってくれた高橋を出迎えた。 試合後のテレビインタビューで立浪監督は、「あの場面でストライクが入らないとかそういう状況でもなかった。その辺はさすがだなと思う」と絶賛。 根尾は期待に応える投球ができましたか?と聞かれ、「はい。結果が良かったですからね。高橋のファインプレーもありましたけども」と、特殊なチーム事情があったといえ、初の勝ちゲーム登板でホールドをマークした根尾を戦力として認めた。