心臓・血管修復用の頑丈なパッチ、大阪医科薬科大や帝人が製品化
根本教授が試しに実際の手術時に使用している針と糸で縫ってみると、スムーズに縫い合わせができた。体内に入れると、3カ月でゼラチンの膜が分解されて、組織がそこに入り込む。2年経つと吸収性糸が溶け、それ以上の年月が経つと非吸収性糸が伸びて組織になじむ仕組みだ。 パッチを心室中隔欠損症の赤ちゃん3人に実際に使ったところ、5年経過後も異常はなかった。帝人とも組むことで医療品としての承認が得られ、保険適用になった。今年6月から全国の医療機関への販売を始めた。
今後は幅広い世代の心疾患がある患者にパッチを使った全国31施設の150症例を追跡調査し、経年での問題が生じないか精査するという。根本教授は「論文を書くのが目的なら、ヒトに使えることが分かった時点で終わりにできる。しかし、今回はあくまでも『始まりの終わり』にしかすぎない通過点。これからは心臓の人工弁といった常に動く素材についても考えていきたい」と話す。
日本での臨床試験と同時に、米国や欧州での販売も目指している。米国の許認可を得るには、EOG(エチレンオキサイドガス)滅菌による残存ガス濃度試験といった別の観点からの試験も必要になる。「誰でも、どこでも使えるような素材で、再手術を減らしていきたい」と根本教授はいう。
製品名「シンフォリウム」は、英語で共にという意味の「シン」と、ラテン語で葉を表す「フォリム」から造った言葉で、「葉っぱのように修復部分をやさしく守り、治療を受けた子供とともに成長してゆく」という願いを込めている。