「もはや“ととのい至上主義”だ」「銭湯が、お年寄りが行けない場所になりつつある」…サウナの「異様な流行」の裏で進む“老人の排除”の実態とは?
ゆっくりできる雰囲気じゃなくなってしまったし、あの熱々のサウナ、キンキンの水風呂は、サウナ好きであってもお年寄りにはキツいですよね」 ■日本で進む「ととのい至上主義」 2019年のブーム以後、特にフィンランド式の本格的なサウナが増えた。温めた石の上に水をかけてサウナ内の温度を上昇させる「ロウリュ」や、そこで生まれた熱波をタオルなどであおいで循環させる「アウフグース」がサウナにおいて一般的になってきたのだ。
「ととのう」ためにさまざまな工夫を凝らす、いわば「ととのい至上主義」が本格的に構築されてくる。 中でも、一部のサウナーから支持されているのが「できるだけ高温のサウナに耐えて、できるだけ低温の水風呂に耐えるほど気持ちいい」という考え方だ。 実際、サウナ検索サイトである「サウナイキタイ」で調べると、一般に「高温サウナ」といわれる100度以上のサウナを有する施設は2120件あって、全体掲載数1万4089件のうち15%を占めている。
ちなみにサウナの発祥国であるフィンランドでのサウナの温度は70~80度で、サウナ文化研究家のこばやしあやなによれば、日本のサウナを目の当たりにしたフィンランド人は「サウナ室が高温低湿すぎて、ロウリュ本来の心地よさが楽しめない」と困惑するという((誤解だらけ? 「フィンランド式サウナ」意外な真実/東洋経済オンライン・2023年5月31日)。 担当編集行きつけのサウナで起こった変化も、まさに「高温・低温二極化減少によるととのい至上主義」の最たる例だろう。
しかし、その結果として「地域のお年寄り」がいなくなった。実際、極端な温度変化がある昨今のサウナは、高齢者にとっては体の心配が必然的に出てくる。 最近話題の「ヒートショック」の危険性も上がる……かは、その人のサウナの利用スタイルにもよるだろうが、安全に配慮して入っても、肌は痛くなるだろう。 地域の高齢者が集い、なんとなく時を過ごす場所であったサウナは、その本格化に伴ってひっそりと高齢者を「排除」し始めたのである。