高校の数学教師ですら間違える⁉「逆に言うと…」というセリフを多くの人が間違えて使ってしまうワケ
食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。 【漫画】月500時間、時給340円…雇われ店長が明かす「過酷すぎるコンビニ勤務」 長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+α新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。 『大人のための算数力講義』連載第8回 『「データドリブン」の時代には必須の知識…統計で用いられる「尺度」や「変数」とは何か説明できますか? 』より続く
若者たちの間違った「逆に」発言
「逆に言うと……」という発言はときどき聞くだろう。 たとえば、Aさんが「選挙権は18歳以上です」と言ったとする。それを聞いたBさんが、「逆に言うと、この前の選挙にCさんは行ったでしょ。だから、Cさんは童顔だけど、18歳以上なんだ」と言うことがある。 この「逆」という言葉は、本当は注意して使いたいものである。そして昔から、「逆は必ずしも真ならず」というよく知られた諺がある。 実はこの諺については、15年ぐらい前の文系理系を問わない一般教養的な授業では、大概の大学生は知っていた。 ところが現在は、ごく一部の大学を除くと、大概の大学生は知らないのである。 「1000円をもっているならば、カレーを食べることができる」は正しいだろう。しかし、「カレーを食べることができるならば、1000円をもっている」は正しいとは言えないはずだ。 このように、その諺を知らないと日常生活でも困るのである。まして、算数・数学の世界ではとても大切である。 「a>1, b>1⇒(ならば)a+b>2, a×b>1」 という論理文は正しい。しかし、この文の逆、 「a+b>2,a×b>1⇒a>1, b>1」 は正しいだろうか、という問題を考えていただきたい。