1年常温保存OKのミートボールも 引き算で食材磨く 石井食品「イシイのおべんとクン ミートボール」(下)
石井食品のロングセラー「イシイのミートボール」は2024年までに累計50億個(推計)を売り上げた。半世紀の節目に掲げたのが「もっと『使える』ミートボール」というメッセージだ。その思いを実現した「いつでもミートボール」は製造日を含め約1年間も常温で保存できる。画期的な長期保存が可能になり、第5回日本子育て支援大賞(企業部門)を受賞した。(前回の記事<ミートボール「おべんとクン」50年 最初は中華風肉団子>) 一般家庭向けとして2024年2月に発売された「いつでもミートボール」は定番商品「イシイのおべんとクン ミートボール」と同じく、温めずにそのまま食べられる。食品添加物を使っていないのも同様。10粒入りの120グラムで、価格は216円だ。
自衛隊向けに開発 自然災害やコロナ禍で消費者から引き合い
石井食品が自衛隊向けに常温保存が可能なミートボールを開発したところ、自然災害やコロナ禍で一般消費者からの引き合いが強まって本格的に商品化した。 通常の「イシイのおべんとクン ミートボール」は賞味期限が製造日から30日間で、10度以下での冷蔵が必要だ。「長期保存タイプは防災備蓄用を消費しながら買い足すローリングストックに向いていて使い勝手がさらに高まった」と、顧客サービス部営業企画グループの古屋由人マネージャーは長所を説明する。 火が使えない非常事態に役立つだけではない。常温で持ち運べるから、学校や勤め先で食事の際に封を切って、おかずを増やせる。ハイキングやドライブなどでも手軽に「もう1品」がかなう。 冷蔵品ほどには賞味期限を気にせずに済むから、まとめ買いしておけるのは、こまめな買い足しの手間を省く。冷蔵品ではないので、冷蔵庫内でのスペースを食わないのもありがたい。
社長自らも育児体験 子育て世帯に寄り添うスタンス
石井食品は子育て世帯に寄り添うスタンスで有名だ。石井智康社長は自らもシングルファーザーとしての育児体験を持つ。「農と食卓をつなぎ、子育てを応援する会社に」と、ビジョンにはっきり「子育て応援」をうたっている。 同社は昼食用の弁当作りを助けてきたが、弁当を取り巻く事情にも変化が表れている。例えば、近年は中学受験が増え、小学生の塾通いが珍しくなくなった。夕食を塾で食べる子どもに弁当を持たせるケースが増えていて、加熱せずに済むミートボールの需要も広がっている。 冷蔵品は温めて食べる人が多いが、熱を加えると、周りのおかずを痛めてしまう恐れがあり、加熱不要の常温タイプは好都合。封を切るだけで済むから、用意する際の「時短メリットが大きい」(古屋氏)。日本子育て支援大賞に選ばれたのも道理だ。もともと通常の「イシイのおべんとクン ミートボール」も加熱は不要だ。 出番は弁当だけではない。子どもが好む甘酸っぱいトマトソースは、朝食のパンに挟んだり、ミートボールパスタの具材に使ったりと、用途が広い。キャンペーンやイベント、SNSを通じて「新しいアレンジレシピの紹介に努めている」(古屋氏)。