親が亡くなりました。下書きのような遺言書が何枚か出てきました。どれが効果のある遺言書なのか見極める方法はありますか?
亡くなった方の自宅で、遺言書を何枚か見つけることがあるかもしれません。遺言書が複数あるときは、どれが効果のある遺言書なのかを見極める必要があります。 本記事では、「親の家で遺言書を何枚か見つけた。大半は下書きのようだが、どれが効果のある遺言書なのかを見極めるにはどうしたらよいか」というケースについて解説します。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる?
遺言には3種類あり、それぞれ決められたルールがある
「遺言は、自筆証書、公正証書または秘密証書によってしなければならない」と、民法第967条に規定されています。一般には、これらを自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言といいます。 各遺言の特徴を簡単にいうと、自筆証書遺言は自分(遺言者)が遺言の全文、日付、氏名を自書、押印するもの、公正証書遺言は公証役場で自分が口述し、公証人が筆記するもの、秘密証書遺言は自分が署名・押印し、封印した遺言を公証役場で存在の証明のみしてもらうものです。 今回のような親の家で見つかった遺言書は、自筆証書遺言に該当するものと思われます。自筆証書遺言については、民法第968条に以下のように規定されています。 ・遺言者が、その全文、日付、氏名を自書し、押印しなければならない ・財産目録については、自書しなくてもよい ・加筆・削除・変更する場合は、その場所を指示して変更した旨を付記し、署名、かつ、その変更の場所に押印しなければならない この規定に適合していない場合、遺言としての効力はありません。したがって、遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があること、それぞれ決められたルールがあることを、まずは押さえておく必要があります。
自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で検認の請求をしなければならない
遺言書を家で見つけた場合、その場で開封してはいけません。遺言書の開封についても、民法で以下のように規定されています。 ・遺言書の保管者、または遺言書を発見した相続人は、遺言書を家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない(第1004条) ・これを怠ったり、検認を経ないで遺言を執行したり、家庭裁判所外で遺言書を開封した場合、5万円以下の過料となる(第1005条) この規定は、公正証書遺言については適用されませんが、自宅に保管された遺言書は自筆証書遺言と考えられますので、この規定に従わなければなりません。 ちなみに、検認とは、相続人に対し遺言の存在や内容を知らせるとともに、遺言の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。遺言書の有効・無効を裁判所が判断するというものではありません。