【ABC特集】800人の村民の医療を1人で支える ”へき地”医療に従事する医師に密着 奈良・下北山村
設備は整っているものの・・・
1979年に開設した下北山村診療所。外見はやや年季の入った建物ですが、設備はというと・・・ (田口先生) 「7年以上前から電子カルテ導入してて、南奈良総合医療センターという、ここからちょっと離れた所にある大淀町の病院さんと連携ができるようになってまして」 (田結荘看護師) 「超音波エコーの機械もあります。災害時、ここは陸の孤島になる可能性が十分にあるんで。持ち出しができるタイプです」 田口先生は都市部にある同じ規模の病院と比べても遜色ないと話します。 (田口先生)「なんかあったら往診にいって、往診箱持って駆けつけるみたいな感じではないかもしれないですね」 (記者)「夜中に台風の中かけつけて・・・みたいなのはないですか?」 (田口先生)「ああいうようなイメージからは、変わりつつあるのかなと思います」 技術革新や医療行政の進歩もあって、受けられる医療の地域差は以前より小さくなっているようです。
技術や機材が進歩しても働く人がいない
これでへき地でも安心・・・と思いきや、別の問題が起きているといいます。 診察を受けにきた村に住む80代の女性。「咳が出て困る」とのこと。 (先生)「歌を歌うのは喉の筋肉がよう鍛えられるんで、デイサービス行って、カラオケ歌ってもらったほうがええと思いますんで。お薬をまた2週間出しときますんでね。よろしくお願いします」 (女性)「毎週行ったほうがいいかいね?」 (先生)「毎週行ったほうがいいです。必ず。イヒヒじゃないよ。村で長く生活せなあきませんからね。約束したじゃないですか」 笑ってごまかそうとする女性に対し、田口先生が念を押すように言い聞かせます。そこには深い理由が・・・ (田口先生) 「あの人は肺炎になって帰ってきたんですよ。家族はいるんですけど村の外にいて。1人で生活されているんです。この村って介護サービスがほとんどもうない状態になってるので、家族の力を借りて村で生活を続ける。そういうのが全くない場合って残念やけど村にいられないと」 村に介護サービスが整っていないため、1人暮らしの高齢者は健康を維持できなくなると、村から出ていかざるを得ないというのです。 (田口先生)「いわゆる皆さんがイメージしているようなへき地の診療、特にいちばん大きいところは在宅医療、訪問診療だと思いますけども、そういうものに着手することが逆にもうできなくなってしまっている」 技術や機材は進歩しても、人がいなければ介護も医療も成り立たない。「継続的」にへき地で働く人を確保することはいまも難しく、課題として横たわっています。下北山村診療所も村の職員をはじめ、看護師や医療事務スタッフあわせて5人ほどでギリギリ運営している状況です。
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