DAZN社長が激白!「値上げの理由」「無料配信戦略」から「収益多角化」まで
● 3年連続で月額料金を値上げ コンテンツや技術に投資する 放映権は頭打ちして微減になっている国もあれば、非常に高騰している地域もある状況です。今年は「正当な放映権料とは何か」ということを、データを基に科学的に検証していくことに力を入れています。8年間運営してきたので、かなり知見を構築できていると思います。 ――3年連続で値上げを実施し、Standardプランの月額料金が4200円になりました。2016年のスタート時と比較すると2倍以上になっています。値上げは受け入れられていますか。 「自信を持って受け入れていただいた」というのは傲慢だと思っています。受け入れていただいている方々もいらっしゃるでしょうし、仕方なく受け入れていらっしゃる方もいるということは理解しています。 ビジネスを永続的にしながら、成長投資もするための価格設定であるということです。我々は年間では7700試合以上をライブ配信していますが、コンテンツに対しての投資も、技術に対しての投資も着手しています。 具体的な金額については「4200円あれば現地で1試合、観戦に行けるではないか」という見方もあるでしょう。逆に、月間にDAZNで観戦している試合数で割ると安い、とみていただける方もいると思います。 それでも、「全てを価格に転嫁しているわけではない」ということだけは申し上げられます。いろいろな企業努力をしているので、これからの我々の姿を含めて、もう少し長い目で判断いただけたらという思いですね。 ● 市場を拡大させるために フリーミアムも強化する ――「新しいDAZN」の構想について教えてください。 ファネル(漏斗)で物事を捉えています。一番下がサブスクの有料で見ていただくお客様です。現在のお客様ですね。この部分にはデータ等の付加価値を加えながら専門性、多面的なスポーツの観戦環境を提供していくことを目指していきます。 一方、オリンピックなど大きなイベントの時を中心に競技を見る方や、スポーツをファッションとして捉える方もいます。いわゆるライトなファン層、ファネルの一番上のところです。 2024年1月から、一部コンテンツを無料視聴できる「DAZN Freemium(フリーミアム)」を始めましたが、そういった方々はフリーミアムの部分でより幅広く捉える。そのうえで、どうやって一番下の部分にご案内するかを考える必要があります。 ファネルの真ん中の部分の方には、ペーパービュー(番組ごとに料金を払うシステム)でのご提供もできるはずです。ところが、今はファネルが真逆の形になっています。 ――通常は逆三角形になるはずが、三角形になっている? フリーミアムの部分が少ないわけです。今後は有料で見ている方々を優先しながらも、ファネルの上の部分にもリソースをかける必要があります。この部分は課題ですね。 市場を拡大していかないと、最終的には自分たちも萎んでしまう危険性があります。無料コンテンツを充実させて、有料だともっと豊かにそれが見られるという体験をしていただく。フリーミアムではJリーグの試合も一部無料で配信しています。 フリーミアムで見ていただく数が多ければ、ファネルの上から下までお連れする数も増えて、サブスクの増加にもつながるはずです。フリーミアムの部分を伸ばすことは広告事業にもつながります。