【2023年海外メジャープレーバック】“クラス19“の落ちこぼれ。全米オープンを制したのは遅れてきた伏兵ウィンダム・クラーク
大会前誰がウィンダム・クラークの優勝を予想しただろう? ジョーダン・スピースやジャスティン・トーマス、ザンダー・シャウフェレらと同じ“クラス19(19年に高校を卒業)”のまったく目立たない方のひとり。23年5月のウェルズファーゴ選手権でようやく初優勝を飾ったばかりの彼が名門ロサンゼルスCCおこなわれた最高峰のメジャーでトロフィーを掲げるとは。伏兵はいかにしてタイトルを獲得したのか? ウィンダム・クラークのドライバー連続写真はコチラから
これまでのメジャーの戦績は惨憺たるものだった。6回出場し最高位が75位。直近の全米オープンは2回とも予選落ち。その彼がオクラホマ州立大学の憧れの先輩リッキー・ファウラーとの最終組対決を制し、メジャー4勝のローリー・マキロイに1打差をつけ逃げ切ったのだ。 メジャーでのはじめての優勝争いにもひるむことはなかった。「これまで必死に頑張ってきて、この瞬間を夢見てきた。タフな戦いだったけれど“今日は自分の日だ“と思えた。バック9は苦しかったけれどずっと僕ならできると自分にいい聞かせた」 鍵になったのは8番のボギーセーブ。バンカーのなかのブッシュに打ち込んだが、最悪の状況で最善の解決策を編み出しボギーで収めたことがバック9に繋がった。すると14番パー5で本人いわく「ショット・オブ・ザ・デイ」が飛び出す。フェアウェイから完璧な弾道でピンハイに2オン。これを2パットで沈めバーディを奪う。 ファウラー、マキロイ以外にもスコッティ・シャフラーやキャメロン・スミスらスタープレーヤーがリーダーボードにひしめくもののショートパットを外したりバンカーからパーセーブできず肩を落としたり。クラークだけがポジティブなバイブスを放っていた。 そして迎えた最終ホール。セカンドをグリーン手前に載せるとファーストパットを50センチに寄せてパー。勝った、逃げ切った。キャディと抱き合い溢れる思いに身を委ねた。涙をキャップで必死に隠し空を見上げた。 「今日は母が見にきてくれたような気がしていました」と大学在学中に乳ガンで他界した母に思いを馳せた。元ミスニューメキシコだった美しい母はカリフォルニアに住んでいた時期もあり、父とはリビエラCC(ジェネシスの会場)で結婚式を挙げている。今回の舞台「ロサンゼルスとは縁があるんだ」。 ラウンド後、ファウラーから「お母さんは君を誇りに思っているね」と声をかけられた。胸が詰まった。「ここに彼女がいたら抱きしめたい。今日は母に会いたくて仕方ない」 メジャー獲りに成功し、フェデックスカップのポイントランクも堂々の3位。世界ランクトップ10入りを果たしたクラーク。もう伏兵とは呼ばせない!
川野美佳