“手の付けられない空き家”の発生を防ぐために…高齢の親族を持つ人には「事前の対処」が求められるワケ【空き家問題のプロが解説】
身寄りのない叔母が急に倒れ、甥である筆者が入院費等の出費を立て替えることになりました。こうした事例は、長寿社会の日本では今後も多発するとみられるため、事前の対処について準備しておくことが重要です。本稿では、三木章裕氏の著書『実家の「空き家」超有効活用術』(フォレスト出版)より一部を抜粋し、筆者自身の経験から、“手の付けられない空き家”の発生を防ぐための心構えについて考えます。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング
一人暮らしで、身内も私だけだった叔母が、急に倒れた
「おばさんが自宅で朦朧()として即入院が必要です! すぐ来てください!」 ある日の午前中、私が仕事をしていると、携帯に一人暮らしの叔母(当時80歳)を訪問看護している看護師さんからの電話がありました。 その前日の夜は、例年になく記録的な寒さでした。叔母は石油ストーブを使っており、どうやら夜中に灯油が切れたようで、そのまま寝ている間に低体温症になって、朝、訪問看護師さんが来た頃には、簡単な応答はできるようでしたが、起き上がることさえできない状況でした。 しかし、一人暮らしの叔母ですから、誰か身内の者がいないと、家から連れ出すことも、入院の手続きもできない状況なので、甥である私が急遽、叔母のもとに向かうことになったのです。 家に着いてすぐ「おばさん!」と声をかけると、かすかな声で「これを預ける」と言って、自分の脇の棚にあった、犬のパッチワークのついた手提げカバンを指さしました。 あまりにか弱く目線も定まっていない様子なので、寝ぼけているのかと思いましたが、そのカバンを覗()いてみると、銀行の通帳や印鑑、キャッシュカードなどの貴重品らしきものが入っていました。 とりあえずそれをだけを預かり、看護師さんとともに叔母を病院に運び込みました。 その間も叔母は、声をかけても、うつらうつらしたような状況で、正気なのか、うわごとなのかわからない言葉で、私と看護師さんに何か話かけていました。 病院に着くと、すぐ診察室に運び込まれ、2時間ほど、私は待合室で待たされました。診察室はかなり切迫していた感じで、看護師さんやお医者さんが入れ替わり立ち替わり出入りしているのが見えていました。 もう叔母は持たないのかもしれないと思い始めた頃に、診察した医師から呼び出されました。 医者が開口一番、「今は、いつどうなってもおかしくない状況です。覚悟しておいてください。とりあえず今は、点滴を打って眠っています。肺も心臓も非常に弱っています。できるだけのことはしますが、1週間持たないかもしれません!」と言います。 つい1週間前まで元気で電話で話していた叔母なのに、これほど激変するのかと、私は容態の急変に驚きました。少し容態が落ち着いているので、とにかく明日また病院に行くことにしました。 とにかく、その日は入院手続きをして、「何かあれば、すぐに駆けつけます」と言って、いったん叔母の家の戸締りをし、近所の方に声かけをしました。 妻にも様子を話しましたが、1週間前に叔母と電話で話していたのでびっくりしていました。しっかりした様子で受け答えして、今年の冬は寒くてかなわないと愚痴をこぼしていたので、元気だと思っていたようです。 叔母は、私の亡くなった母の妹で、結婚もしていませんでしたので、本当に身内は私しかいないのです。 そこから1週間は、毎日病院に見舞いに行きましたが、ただ寝ているだけで、それも、口には酸素吸入、全身にはいろいろな数値を検査する装置が取り付けられ、ずっとピッピピッピと鳴っていました。 両腕もこれでもかというくらい、いろいろな点滴がぶら下がっていて、到底意識が戻りそうな様子ではなく、私も覚悟して、葬儀やお墓のことまで考えるようになっていました。 それから2週間ほど経つとかなり状態は良くなり、意識も少し回復してきて、私が声をかけて笑いかけると、笑い返すようになってきました。最初に医師が言った、危険な状態からは脱しているようで、日に日に顔色も良くなってきているようでした。