“手の付けられない空き家”の発生を防ぐために…高齢の親族を持つ人には「事前の対処」が求められるワケ【空き家問題のプロが解説】
叔母のすべての支払いを立て替えた半年間
その頃になると私も冷静になってきて、叔母から預かったカバンの中身を確認することにしました。叔母の貯金はその時点で200万円ほど、年金が月15万円ほど、あとは自宅の不動産がすべての財産でした。 この間も、私は病院の入院のための保証金や衣服代やおしめ代など、10万円以上立て替えて病院に支払っていました。 そろそろ1カ月が過ぎようとした頃、病院の支払いもあるので、銀行に出金に行かなければならないと思い出し、訪問看護に来ていた看護師さんに「入院代の支払い等があるのでお金を出したいのですが、もしかしてキャッシュカード番号とか聞いていますか?」と尋ねたところ、知らないとのこと。 そこで、カバンの中も調べたのですが、カード番号をメモ書きしているようなものもなく、カードによる引き出しは無理そうだと気づきました。 そのとき、最初によぎった思いは「どうしよう……」でした。たとえ通帳と印鑑があっても、本人が窓口に行けない、本人が出金伝票にサインできない状況では、今の日本の金融機関ではお金を下ろすことができません。 私は、一か八か、少しは意思表示ができる叔母に、「カードの番号とか覚えてる?」と話しかけましたが、目を閉じて首を横に振りました。もうすっかり記憶が混濁しており、本人も何がなんだかわからない状況になっていて、その場そのときだけ、なんとか反応している感じです。 年齢的に認知症もあるだろうと医師や看護師さんは言ってくれるのですが、高齢者があれだけ危機的な身体的状況になれば、もうまともにいろいろなことに反応できなくなっているのではないかと思いました。 とりあえず叔母の支払いは、私のほうで立て替えるしかないと覚悟して、病院の支払い等をし始めました。病院の入院費は毎月約18万円、家のほうに来る、電話代、上下水道代、ガス代、NHKの支払い、その他もすぐ停止しましたが、新聞代、保険料、生協費等諸会費、それと自宅の固定資産税で、月割りに計算しても合計毎月5万円くらいは別に支払うことになりました。 この間も叔母は、酸素マスクをつけ続け、何も食べられず点滴の栄養だけで、小康状態で生き続けました。気持ち的に救われるのは、見舞いに行き、声をかけると笑顔を作ろうとすることです。どこまでわかっているのかは疑問ですが……。 半年が経ちました。私が立て替えている金額も150万円を超えるくらいになりました。その間、叔母の銀行口座には、2カ月に一度支払われる年金が着々とプールされていましたが、手出しができません。「2週間も持たない」と言われていた叔母ですが、点滴と酸素吸入だけで、かれこれ半年も生きており、まだまだこの状況が続きそうな感じでした。