【ラージ商品群・国内第2弾】ナローであることの意味と魅力とは マツダCX-80デザイナーインタビュー
ナローならではの魅力
鈴木:造形に使える寸法が小さいのに抑揚がすごくある。それは、どういう工夫なのでしょうか? 玉谷:僕らが表現するのは、リフレクションであり光です。立体の張りを、丸くしたい、四角くしたいという単純な話ではありません。 いかに、光をアーティスティックに、生命感あるように動かすのか? そのためには、どういう角度の面が必要なのかを考えています。 光は、垂直に近いところで、わずかに上を向くか、下を向くかで大きく違うんですね。角度が、ほんのちょっと違う方が、光は早く移動するんです。大きくふくよかな面があるだけでは、光があるところに集まって終わってしまいます。そこを、面の上から下まで通すように工夫することで、迫力が出ます。 鈴木:素直に大きな面にすると大味になってしまうということですね。FRプラットフォームというパッケージングで不利なものを使いながらも、外寸を大きくせず、造形も使える寸法もほとんどない。そうした厳しい条件のもとで生み出したのが、緊張感のある抑揚だったということですね。 玉谷:そうです。実際には凹凸の少ない平板な面であっても光をダイナミックに動かし、周囲の景色を写し込んで魅力を生み出しています。リフレクションや、光を表現するということは、塊を作るとは次元が違うんですね。 ですから、僕らのクルマを、何も反射しないスタジオに持ち込んでも、なんの魅力もありません。周りの環境を写し込んで美しくなるのです。微妙な、針の穴を通すような戦いをしているのです。
鈴木ケンイチ(執筆) 小川和美(撮影)