【75歳からのがん治療】自分の状態に合った、効果的な治療法を知る。術前からできるリスク回避法
手術療法いろいろな合併症、せん妄のリスクは減らせます
手術療法には各種のリスクがともないます。手術がきっかけで、さまざまな問題が生じることもあります。外科手術にくらべて負担が軽いとされる内視鏡治療やIVRを受ける場合でも、合併症の危険性は皆無ではありません。 ただし、合併症の起こりやすさは、年齢だけでなく、栄養状態や糖尿病の有無などでも違います。術前に治療可能な状態と判断され、服用薬の調整や体調を整えたうえで手術に臨めば、大きな問題なく治療を終えられる人が大半です。 ■手術にともなう合併症の例 手術する部位や手術方法によっては、ここに挙げた以外の合併症が起こることもあります。担当医に確認しておきましょう。 ・感染 痰を出しにくくなって肺炎につながったり、手術で縫い合わせたところが赤く腫れたりすることがある ・血栓 横になっている時間が長いと足の血流が悪化し、血管内で血液のかたまり(血栓)ができることがある。血栓が心臓や脳の血管をふさぐと深刻な事態が起こるおそれがある ・その他 手術部位によっては、腸閉塞、声のかすれなど。内視鏡治療では出血など ・麻酔のリスク 全身麻酔時は気管に管を入れて呼吸できるようにする(気管挿管)。挿管時に傷ができることがある。また、血圧が下がったり、血流が悪くなったりして心臓や脳に十分な血液が行きわたらないと、心筋梗塞、脳梗塞などを起こすおそれも
リスクを下げるためにできること
安全に治療を進めるには、術前からの取り組みが重要です。 (1)歯科治療と口腔ケア 口内の雑菌を減らすことが肺炎予防につながります。全身麻酔でおこなわれる気管挿管時に歯が抜けないように、ぐらつく歯の治療もおこなっておきます。 (2)禁酒・禁煙 酒量が多い人はせん妄が起こりやすく、肝機能の低下も心配です。喫煙は痰を増やし、肺炎のリスクが高まります。 ・使用している薬の調整 血液をかたまりにくくする薬など、手術に影響する薬はしばらく休むように指示されるでしょう。医師の指示にしたがいます。 睡眠薬としてベンゾジアゼピン系の薬を使用している場合には、せん妄を起こしやすくなります。入院前に医療者に伝え、相談しましょう。 ・併存疾患をしっかりコントロール 血糖や血圧の良好なコントロールは、合併症のリスクを下げます。 ・術前のリハビリに取り組む
せん妄は予防と早期対応が重要
高齢者は、認知症がなくても入院中にせん妄を起こすリスクが高めです。家族はつきそいを求められることも。いつもと様子が違うと思ったらすぐに医療者に伝えましょう。 早めに気づき、痛みをやわらげるなどの対応でおさまることが多いものの、本人が周囲の状況をつかめず不安が募ると、症状が悪化することもあります。いつも使っている補聴器や眼鏡、見やすいカレンダーや時計などを用意し、穏やかな態度で接しましょう。 続きは<75 歳からのがん治療で「薬物療法」を選ぶなら ~長期に及ぶ薬の管理方法や異変に気づく方法>です。
小川 朝生(国立がん研究センター東病院臨床開発センター精神腫瘍学開発分野長)