俳優・上村侑20歳 念願の時代劇、だけど刀も甲冑もなくて
俳優という職業は不安定な面も 経済に関心
デビュー作は実話モチーフのシリアスな役柄だったが最新作『近江商人、走る!』は痛快な時代劇で、上村は奉公先の米問屋を救うため知恵を絞って価格差を利用した作戦に挑む商人・銀次を明るく元気に演じている。 「歴史が好きだし殺陣を習っていたので、時代劇はやりたかったんです。やっときたか!と刀を持って甲冑をかぶっている姿を想像していたら……まさかの商人役で(笑)」 大坂、伊勢と並ぶ「日本三大商人」“近江商人”の活躍を描くビジネス時代劇とあって、撮影も近江国(現在の滋賀県)をメインに行われた。 「18歳の頃撮ったのですが金融はじめビジネス関連のことに関心がありいろいろ調べていた時期だったんです。最初こそ商人役ということで拍子抜けしたのですが台本を読むとすごく面白くてすぐに気を取り直しました。昔こんな商取引が日本で行われていたのか、こういう時代劇もありかと、自分の中に新しい風が吹いた気がしました」 ビジネスへの関心の高さは上村自身の着実な考え方から来ている。 「俳優という職業は不安定な一面もあるので自分の地盤を固める意味で別に収入源がもう一つあってもいいなと考えていたんです。世界に目を向ける意味でも経済のことは知っておいたほうがいいと経済ニュースも見ています。石油が高騰したせいで物価が高くなっている、一つのサイクルのようにすべてが絡み合いながら回っている……ひとつ欠けると全体に影響があるというのが経済の面白いところだと感じています」
武士と商人ではまったく異なる所作
同作では美しい近江の風景も見どころの一つだ。時代劇で知られる彦根市のオープンセットはじめ近江八幡市の八幡堀など琵琶湖周辺をめぐりながら撮影をした。 「まるでタイムスリップしたかのような街が広がっていて本当に感動しました。セットもだだっぴろいところに一からこれを建てたのかと思うと、映画に携わる皆さんの思いがひしひしと伝わってきたんです。また、山道を歩くと昔の人はこういう景色を見ていたんだろうなと思えて、やっぱりスタジオでやるよりオープンセットやロケでやるほうがリアリティがあって、芝居もやりやすいなと感じました」 時代劇の所作は殺陣を学んでいただけあってスムーズだったのかと思いきや、武士と商人ではまるきり勝手が違ったという。 「正座とか多少心得があるつもりでいましたが、僕が学んだのはあくまで武士の所作であって商人の所作は歩き方ひとつ、袋の持ち方ひとつ、別物といっていいほど違うんです。共演の森永悠希さんからもアドバイスをたくさんいただきました。今までイメージしていた時代劇の所作は、ある一面に過ぎなかったんだなってことに気付かされました」