KKRとベインの「富士ソフト争奪戦」でカギ握る不動産の評価、両雄対決の構図は必然だった
買収過程でひと悶着あったものの、今後はKKRとベインの価格競争に発展することは明白だ。では、なぜこの2社が富士ソフトに高値を提示できたのか。本業であるシステム開発の伸びしろも当然あるが、同社が保有する不動産に対する評価も見逃せない。 KKRが引き合いに出すのは、2022年に買収したJ-REIT(不動産投資信託)運用会社のKJRマネジメント(旧三菱商事・ユービーエス・リアルティ)との連携だ。買収した企業から不動産を切り離し、KJRに売り渡す青写真を描く(2022年4月3日配信 KKR、Jリート運用会社を「2300億円」で買収の衝撃)。
その好例がロジスティード(旧日立物流)だろう。KKRによる買収から1年後の2024年2月、ロジスティードは全国の物流施設33物件をKJR傘下の産業ファンド投資法人に売却すると発表した。2023年末にも、同じくKKRが買収した化学品向けタンク運営会社セントラル・タンクターミナルのタンク底地(川崎・静岡・北九州の3物件)を産業ファンドに売却している。 KJR傘下には、産業ファンドのほかにオフィスビルや住宅、商業施設に投資する日本都市ファンド投資法人がある。富士ソフトが抱えるビルは、こちらが受け皿となる公算が大きい。
KKRにとってのメリットは、物件売却によって投資先企業が資金を回収し、本業への投資を強化できることにある。加えて、KKRは自己勘定でKJRに投資しているため、物件売却によってREITの運用資産が増えれば運用報酬も増加し、めぐりめぐってKKR自身の懐が潤う。 ■不動産会社顔負けの規模 富士ソフトは地上31階建ての秋葉原ビルを筆頭に、横浜や錦糸町、名古屋にも自社ビルを持つ。今年に入っても汐留や博多でもビルを新築するなど、並みの不動産会社よりも潤沢なポートフォリオを誇る。
3Dの要請を受けて2024年1~6月期に8棟を放出し、80億円の固定資産売却益を計上したものの、眠る不動産の簿価と時価の裁定取引ができれば、強気の価格を提示しても投資を回収できる。 対するベインはもともと事業投資が専門で、不動産投資には大きな関心を払ってはいなかった。だが、企業買収を通じて不動産投資の妙味に気づく。とりわけ注目すべき案件が、2020年にTOBによって買収した昭和飛行機工業だ。