「おじさんコミュニティ」で意思決定する時代は終わった 「言語化」で多様性を組織に活かす
新時代のリーダーには「自分の考え」を語る力が必要「相手に行間を読んでもらう」ことを前提としない
――高田さんは「同質性だけでは組織が立ち行かない時代には、リーダーの言語化能力が必要だ」とおっしゃっていますが、それはどのようなものでしょうか。 「行間を読み取る力を相手に求めないこと」です。行間を読むことは人間に必要な能力ですが、それを当たり前だと考えてはいけません。同質的な集団で成り立っていた昔は暗黙知があり、それを共有しているのが基本的な前提でした。今はそんなものはありません。 例えば、「あなたが乗り気でないことを、なぜ私が読み取ってあげなければならないのか」と思われてしまうときは、やはり言葉で説明すべきです。 伝統的な日本の企業では、偉くなればなるほど、周りが全部やってくれるので、リーダーが自ら言葉にする必要はありませんでした。自分でパワーポイントを作って講演をする上場企業の社長は限られているでしょう。多くは秘書や経営企画室のメンバーが作り、社長が上手にしゃべるだけです。リーダーが言うべきことを周りが察して作ってくれている。そうではなくて、「私がやりたいことはこうなのだ」と自分の言葉できちんと表現する必要があります。 ビジネスの現場では、自分の中でスイッチを入れて、言葉にするモードにしていくのです。「わかってくれる」と思わずに、一歩踏み出す。「ちょっと確認して良いかな」とか、「こうだよ」と言えるようにする。冷たくなるかもしれないし、はっきりさせないほうが良いこともあるかもしれないけれど、自分の気持ちや「やってほしいこと」、感想やコメントはしっかりと言葉にすべきです。「言わなくてもわかるでしょう」は成り立たない。 もう一つ、言語化能力を高めるには事態を俯瞰(ふかん)して話すことです。目の前のことではなくゴールから話す。なぜこの状態があるのか、後ろにある本質的な問いは何なのかを常に考えて言葉にする。言語化するためにはものごとの核がわかってないと難しいのです。能力のある上司は全体の風景の中でそれぞれの部下がどういう役割を果たしているのか、目立つ部分だけでなく、それぞれを見ることができます。絵画を見るときに目立つモチーフだけに目を向けるのではなく、それを引き立てる構図や背景の工夫まで気づけるかどうか。部下の働きぶりを見るのも同じことです。 先の見えない時代だからこそ、「わが社はこうなっていく」「日本はこうなっていく」という見通しをリーダーは予測して発信していかなければならないし、そうした俯瞰的な立場から物事を決めざるを得ないのです。それには、なぜこうなっているのか、自分はどうしたいのかを常に問い続けることが必要です。