「おじさんコミュニティ」で意思決定する時代は終わった 「言語化」で多様性を組織に活かす
タバコ部屋で生まれる「おじさんコミュニティ」問題は、意思決定の場に多様な観点が入らないこと
――高田さんは、現在の日本企業における「おじさんコミュニティ」の問題を指摘されていますが、「おじさんコミュニティ」とはどういうもので、何が問題なのでしょうか。 一番古典的な「おじさんコミュニティ」は「タバコ部屋(喫煙所)」です。女性が少なく、閉じた場で仕事にかかわる物事が決まるのが特徴です。他にも飲み仲間やゴルフ仲間とアフター5を一緒に過ごしたり、もともと同窓生で関係が強かったりすることで作り上げられる同質的なコミュニティのことを言います。 これまで女性は社内で人数が少なく、そのような場に入っていきにくかったため、このコミュニティは「おじさん」によって形成されていました。ここでいう「おじさん」は特定の年代の男性を指しているのではなく、アフター5も含む長時間をともに過ごすことで築き上げられる、同質的なコミュニティの構成員を指しています。 同質性は人間にとって気持ちが良いものです。それ自体は悪いものではありません。それに「おじさんコミュニティ」では、同質的な人々で意思決定を行うため、速い。そして一丸になる。安定した世の中、日本が強かった時代には大きな力を発揮してきました。それまでやってきたことや方針を守っていけばよかったんです。 しかし、現在は先の読めない時代であり、組織運営においては思考の幅が広いことが重要です。「おじさんコミュニティ」は存在してもいいけれど、そこだけで意思決定をしてはいけない。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ではない時代に今までのやり方だけを守っていては、国力としても弱くなっていくでしょう。 いろいろな人が入れば当然、すんなりと物事は決まりません。どうしてそうすべきなのか、説明をする必要が出てきます。それは面倒なことですが、「異質」な人々が互いに何を考えているのかを言葉にしあうことで、組織として多角的に物事を見ることができます。 ――コロナ禍を経て、タイバーシティ&インクルージョンの動きが進む中で、「おじさんコミュニティ」は変化してきているのでしょうか。 リモートワークが成立するようになり、「おじさんコミュニティ」のような会合自体が減っているのではないでしょうか。オンライン会議ツールは、初対面の人同士が新しいコミュニティを作っていくにはあまり適さないのですが、物理的に会いにくい人同士が顔を合わせる頻度を上げられるため、特定の閉じられたコミュニティだけで意思決定がなされることが少なくなりました。 しかし、コロナ禍以降、「おじさんコミュニティ」だけではなく、さまざまなコミュニティがなくなりつつあり、人と人とのつながりが希薄になっていることには危機感を持っています。 同じフロアにいたとしても基本的な連絡はメールやチャットなどでやりとりし、対面で話す機会が減っています。それ自体はやりとりの記録が残るのでコンプライアンスの観点からは悪いことではありませんが、時々スイッチを切り替えて対面で話す機会を持つことが重要です。「ちょっと会う」ことを面倒がらない人が、これから得をする。優秀なビジネスパーソンはそれができていて、情報が集まってくるし、人から好かれている傾向があります。 コミュニティとは、情報を与え、もらうことのできる関係性です。あげてばかり、もらってばかりでは成り立たない。必ずしも対面だけでコミュニティを構築する必要はなく、社内ポータルなどで緩くつながることで成功している会社もあります。