「おじさんコミュニティ」で意思決定する時代は終わった 「言語化」で多様性を組織に活かす
上司は「待つ力」を身につけるべし人事はもっと管理職になる面白さの可視化を
――女性管理職が増加するため、また、ダイバーシティ&インクルージョンがもっと進むために、リーダーの「言語化能力」のほかに必要なことはありますか。 評価や判断をする側が、なんでもゼロかイチかで決めないことが必要です。「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念があります。これは白黒はっきりさせるのではなくて、グレーの状態を受け入れる力のことです。思い込みにとらわれずに情報を集め、拙速に物事を決めずに思考実験を繰り返した上で自分で判断することが重要です。 この反対は「女性はこうだ」「この大学を卒業した人はこういうタイプだ」などといった決めつけです。考えているようで、実は決めつけることによって自分で考えることを放棄し、楽をしているのです。たとえば「この偏差値以上の大学でなければうちの仕事は務まらない」と決めてしまえば、悩まなくていいから楽になる。 人がたくさんいる時代には、それでも回っていました。しかし、今は予想できない環境の中で、だれがどう化けるかわかりません。人を育てるときには、この人はこうだと決めつけず、「どっちにいくかな」と見守ることが必要です。決定を先送りにするのではなく、検討し続けることです。安易に決めて楽になってはいけません。 ――最近は、管理職の負荷が増え、管理職が「罰ゲーム化」しているとも言われますが、この状況についての高田さんの見解をお聞かせください。また、そのような時代に女性が管理職を目指したり、周囲がそれを支援したりする際に必要なことは何でしょうか。 まず、「罰ゲーム」と言われるような状況を作ってしまった会社のトップには反省してほしいですね。罰ゲームと呼ばれてしまうのは管理職になることに「うまみ」がないからです。しかし本来、昇進は決裁範囲が広がることであり、大きな仕事、楽しい仕事ができるようになるはずです。会社や人事はその成功例をもっと積極的に見せていくべきです。 人間は得になることなら、自分からするので、「管理職になれば得することがある」と見せていく必要があります。罰ゲームと呼ばれている中身は何でしょうか。自分の時間がなくなる、今よりもっとしんどいことを言われる、給料は上がらない ――。 それを改善するには仕事の無駄をなくす必要があります。AIに任せられることはAIに任せることで仕事の量を減らしていくこともできます。経営陣は「罰ゲームと思われているから」と目先を見て決めつけるのではなく、20年後を見据えてAI導入などの方針転換を決めるのが仕事です。罰ゲームと言われているなら、その理由に対処しなければ言われ続けることは変わりません。もちろん、給与も上げる必要があるのはいうまでもありませんが。 人事は今の時代こそもっとネットの社内報の内容を厚くすべきです。そこで「管理職は楽しい」と実感している社員の例を多く見せるべきです。 女性管理職の登用は、「この人」という決め打ちではなく、広く網を広げておおらかに構えていないとリスクが高い。それこそ指名された側が「何の罰ゲームですか」となってしまう。若い男性もそうです。複数の人材、いろいろなリソースがあると考えたほうが良いでしょう。前例踏襲で人材を選んでいたら現状打破はできません。 管理職候補の人たちを教育する上では、やはり解があることを教えるのは無理です。マネジメントをする中で、「絶対5時に帰ります」「お祈りの時間があるんです」など、外国人も含め、これまでと違った背景をもつ社員がたくさん入ってきます。過去の事例をひも解いて持ってくるのはやめたほうが良い。 かつては同じ背景を持つ男性同士が、あうんの呼吸で仕事を進めることができました。しかしこれからは、女性はもちろん、人種も宗教も違う人たちと働くことになってきます。それは少子化という事実により、避けられない展開です。 多様な人材で構成される組織において「察してくれ」は通用しません。それぞれが自分で考えることを放棄せず、前例踏襲ではない道を探っていくことが会社の未来を作っていくことにつながるのです。