タイソン復帰戦は不完全燃焼“ドロー”…54歳と思えぬ動きも“クリンチ地獄”脱出できず「2分は3分のように長かった」
最終ラウンドを前に陣営は「本当のおまえを出せ!モハメド・アリのような試合をしろ」と疲れの見えたタイソンにハッパをかけた。 一方のジョーンズも現役時代に変幻自在と称されたステップワークからスピードパンチをパンパンパンと繰り出すが、タイソンがコーナーにつめて左のボディを2発打ち込むと、またクリンチである。 残り10秒の合図の音が鳴るとタイソンは左のグローブで「来い!」というジェスチャーを示したが、最後まで“クリンチ地獄”から抜け出すことはできなかった。 タイソンの15年ぶりの復帰戦の相手としてジョーンズを選んだマッチメイクが間違っていたのかもしれない。 「3分で昔はやっていたんだよな。2分がまるで3分のように長かった。でも8ラウンドを戦い抜いたことに喜びを感じている。長い時間を戦えたことが良かった」 タイソンは素直に心境を吐露した。 インタビューアーがジョーンズに今後は?と聞くと「難しいね」とクビを振った。 するとタイソンは「またやろうよ。やらないと」と声をかけた。 さらに「あなたが怪我をするのでは?との心配の声もあった」とジョーンズへの質問が続くと、またタイソンが横から入ってきた。 「俺だって怪我する可能性があったんだ。15年ぶりだぜ。俺のことも心配しろ。彼は、2、3年前まで現役でやっていたんだから」 タイソンは最後に、こう言って、自分一人だけ先にインタビューの場所を離れた。 「人々を励ますために試合に出たんだ。この年齢でも頑張っている。体調も戻した。そこを見て欲しい」 この試合は、PPV(有料放送)で放映され、視聴価格は44.99ドル(約4600円)に設定されていた。両者のファイトマネーには、視聴数による歩合が加算されるが、最低保証としてタイソンが1000万ドル(約10億4000万円)、ジョーンズが300万ドル(約3億1200万円)を手にする契約で、最終的に総額は50億円になるとも予想されている。その金額にふさわしい試合であったかと問われれば「ノー」だろう。だが、錆を落とし、鍛えられたタイソンの動きは、54歳のそれではなかった。新型コロナ禍だからこそ実現したとも言える、古き良き時代を思い出させてくれた泡沫の夢…。大金を手にするタイソンは、さらなる夢の続きを見ようとするのだろうか。