大事な人の死を語り合い、悲しみを言語化 喪失の悲嘆によりそう「グリーフケア」の現場
感情がごちゃまぜになり、どうしたらいいかわからない。診察室では、絡まった思考の糸をほぐしていく。 「診察のたびに自分の話すことを考えるでしょう。そうして、少しずつ今後どうしていこうか考えが整理されているのだと思います」(大西さん) 患者はたいてい月1回ないし2カ月に1回通院する。時間がたち落ち着けば3カ月に1回通って、日ごろの生活について話す。10年以上通う人もいる。 悲嘆を抱えた人が頼れるのは医療機関だけではない。グリーフケアを担う団体などが各地にある。東京都のグリーフサポートせたがやは、その一つだ。 ■年末年始をどうするか 拠点である「サポコハウス」には表札がかかっていて、まるで一般の民家。玄関の呼び鈴を鳴らすと、スタッフが出迎えてくれる。洗面所があり、リビングがある。各部屋では、喪失体験を話す「分かち合いの会」が毎月開かれる。子どもだけが集まるプログラム、大人だけ、パートナーを亡くした人だけが集まるプログラムなどがある。参加費は500円。 まずは畳の部屋に座布団を並べて、あるいはフローリングの部屋に椅子を並べて、円座になる。話したくなければパスしてもいい。ここで話したことは秘密にする。こうしたルールを共有して、分かち合いの会は始まる。この流れを「始まりの輪」と呼んでいる。 「今日という日はもう来ないんだと、突然足元から崩れ去り、目の前の何かが失われるような、嵐の中に巻き込まれるのが喪失体験です。人と違う時間が流れているような、ふわふわ浮いている感覚になります。そんなときも、ここに来れば、まず『始まりの輪』から始まる。一貫性があることが大切だと思っています」(ファシリテーターの松川綾野さん) それから一人ずつ喪失体験を語っていく。 「どのようにグリーフを受け止めて、折り合いをつけていくかというプロセスはご自身の中で起きているので、私たちに何かできるわけではありません。評価も分析もしません。ただ、安心安全な場を一緒に作ろうとしています」(ファシリテーターの池田菓乃さん)