人事の常識を覆す制度改革 ドミノ・ピザのジョブ型雇用やノーレーティング導入の秘訣に迫る
IT部門にはより強い人事のサポートが不可欠
――貴社のHR部ではIT部門とのコラボレーションを積極的に行っているとうかがいました。どのような狙いがあるのでしょうか。 これはIT技術を活用して人事業務を効率化するといった観点ではなく、IT部門の人財マネジメントは他部門と比較しても難しいことが多いという認識から出発しています。そこで人事がIT部門のビジネスパートナーになる必要があると考えました。CEO、COOとも連携しますが、もっとも緊密にコミュニケーションをとっているのはIT部門のオフィサー(CIO)で、毎月のミーティングは4年以上続いています。 理由はいくつかありますが、最も大きいのは、IT領域では人財の獲得競争が激しく、本気で取り組まないと優秀な人財を採用できないからです。もう一つは、IT部門の従業員はプログラミングなどに集中することが多く、社内でのコミュニケーションの機会が少ないから。何か問題がないか、こちらから聞き出していく必要があります。 優秀な人財を確保するには多様性も重要で、当社のIT部門の従業員の半数以上は外国籍です。当然、生活習慣や考え方なども違うので、個別のマネジメントが欠かせません。こうした理由から、IT部門に対してはより強いサポートが必要だと考えています。 ――具体的なサポートの事例を教えていただけますか。 制度化したものでは「Work From Home-International」があります。日本で勤務している海外出身の従業員が、年1回・最長1ヵ月間、母国での在宅勤務を認める制度です。これは世界のドミノ・ピザの中でもおそらく、日本独自の取り組みです。海外のグループ企業からは「日本はそこまでやるの?」と言われることもありますが、実は社員には人気があって、この制度の利用率はかなり高いですね。 もうひとつは「Saikin-Do Survey」の導入です。これは「最近どう?」と声をかけるような感覚で従業員の心身のコンディションをリサーチするWEBサーベイです。IT部門だけでなく全従業員が対象で、月1回実施しようと企画しました。基本的なアンケートの他に何でも自由にコメントできる欄も用意しています。会社に対して意見を伝える場があること自体が安心感につながる効果もあると考えています。 ――「Go Gemba!」「Saikin-Do」など、制度のネーミングにも凝っていますね。 人事制度のネーミングはとても重要です。「Go Gemba!」は普通にネーミングすれば、「本社スタッフ店舗勤務制度」ですから、ワクワクしませんよね。人事制度は、私たち人事チームの商品なので、わかりやすく印象的なネーミングにすると、制度の利用率も向上します。2030年に「日本でもっともサステナブルなQSR(クイック・サービス・レストラン)になる」ため、今後もOKRを中心とした良い組織づくりをしていきたいですね。