いまや「巨大産業」となったゲームをめぐる研究の「3つの領域」
ゲーム開発・販売の世界市場の価値は、年間300億ドルを超えるとしばしば言われる。 【マンガ】「長者番付1位」になった「会社員」の「スゴすぎる投資術」の全容 巨大産業であり、日々膨大な数のプレイヤーが遊んでいるデジタルゲームは、21世紀以降、研究も進んできた。2003年にデジタルゲーム学会(DiGRA: Digital Games Research Association)設立、初代会長に就任し2006年まで務めたゲーム研究者のフランス・マウラによる『ゲームスタディーズ入門: 文化のなかのゲーム』はデジタルゲーム研究がどんなことをしてきたのか、どんな方法論を採用してきたのかが整理されている。 ゲームスタディーズでは歴史学、人類学から、心理学、社会学、教育学、コンピュータ科学、文学・アート研究まで、さまざまな学問分野が参照され、多様なアプローチが取られてきた。既存の、しかしこれまでは相互に離れていたアイデアや概念、思考の枠組みを接触させることによって、ゲームについて考えるための新しい方向性が切り開かれ、理解を進展させてきた――とマウラは言う。 デジタルゲームは産業としてもエンターテインメント、アートとしても比較的新しいものであり、それを理解し、論じるには、新しい道具立て、概念をつくる必要がしばしば生じる。それはゲームに限らず現代のほかのフィクションやメディアなどを考える上でも参考になるものかもしれない。
ゲームスタディーズの「3つの領域」
マウラは、ゲーム研究は、すでに作られているゲームを単にプレイすることよりも、ゲームデザイナーの仕事にはるかに似ている、と言う。研究者は新しいアイデアのための体系的仕組みを開発・実装し、その構築物がアカデミックなコミュニティのメンバーにどう「プレイ(実践)される」かを確認しなければならない。クリエイティブかつインタラクティブな作業なのである。 ゲームスタディーズには少なくとも3つの主要な領域が存在する。 1.ゲームとその構造の探究を主な目的とする研究 2.ゲームプレイヤーとそのプレイ行動の理解に主に注目した研究 3.ゲームデザインと開発の研究 どのようにアプローチするかによって、ゲームは違った姿を見せる。もっと言えば「異なるものになる」可能性がある。たとえばゲームに「物語」を求めるスタンスと、ゲームの本質を「インタラクティブなプレイ」に求めるのとでは、同じゲームを扱っていても得られる考察はずいぶんと変わってくる。ゲームに何を求め、どう見るのか? ここで重要なのは、新しい概念が導入されると、ゲームとプレイヤーの関係の理解は、別の文脈に照らして新たな理解がなされる、という点だ。