いまや「巨大産業」となったゲームをめぐる研究の「3つの領域」
ゲームの「遊びやすさ」の分類
とすると「シェル」部分だけでなく、「コア」となるゲームの仕組みにも目を向けて、合わせて考えないことには『シヴィライゼーション』にプレイヤーたちが感じる魅力や問題は捉えきれないはずだ。 ではゲームの仕組みを考える上で、ゲームスタディーズはどんな整理をしてきたのか。 たとえば「遊びやすさ」の分析モデルのひとつは、以下の4つの主要素に分類している。 1.機能的な遊びやすさ――ゲームソフトウェアとその操作の使いやすさなど 2.構造的な遊びやすさ――ゲームの複数のルールとそれらが生み出す課題がどれほど楽しいか 3.視聴覚的な遊びやすさ――サウンドとグラフィックスの実装がどれほどゲームプレイ体験に影響するか 4.社会的な遊びやすさ――そのゲームがどのような種類の社会的実践に適しているか だ。4つ目はわかりにくいが、例としてハイスコアのリストが挙げられている。ハイスコアの表示はプレイヤー同士の一種のコミュニケーションとして機能する。そのような他のプレイヤーとのコミュニケーションや交流(interacting)の方法が「社会的な遊びやすさ」に関わる。 いや、もっと違うところに注目すべきだ、という意見も当然あるだろう。ここまでで紹介してきた議論は本書の、そしてゲームスタディーズ全体のアプローチのほんの一部にすぎない。 それでもここまでで「デジタルゲームは複数の異なる方法/視点でプレイできる」「ゲームの本質は永遠で不変のものではなく、社会的・文化的過程の中で変化し、徐々に再定義されるものとして現れる」といったマウラの主張・整理は納得できるはずだ。 「ゲームをやるときにそんな面倒くさいことは考えてない」とか「パズルゲームとかはどうなの?」と思う人もいるだろう。しかしそういうプレイヤー、カジュアルゲームについての研究もある。ゲーム研究の沼は深い。ゲームとその研究を通じて、人間の実に多様な様相が見えてくる。
飯田 一史(ライター)