非正規職員でいまだ現役の66歳。離婚の財産分与で買ったマンションがあって良かった!「素直なSOS」が幸運を呼び込む
◆夫は精神的DV男で結婚前から浮気も いまの住居にも独り暮らしにも大満足の淑恵さんですが、いつも、結婚していた間だって、一生懸命に生きてきました。婚姻期間中は、「長男の妻」役割を積極的に果たしました。夫の実家は農家で、農業は義弟が継ぎました。実家に近寄りたがらない夫に代わって、淑恵さんは顔を出し、義父母や義弟たちと仲良くしました。米を送ってくれる義弟の田んぼに、毎年、田植えや稲刈りの手伝いにも行きました。 正月には、淑恵さんや義母、義弟の妻たちが、義理の実家の台所で働くのが常でした。義父や夫ら男性陣は飲んで食べてくつろぐだけ。淑恵さんは、女性陣を代表して、妻たちも労って欲しいと義父に直談判。小遣いをもらい、妻たちだけで正月の後に泊まりがけの旅行に行ったことも。長男の「よくできる嫁」として、義父にはかわいがられ、義理の家族には絶大な信頼がありました。 ところが8歳年上の夫は精神的DV男でした。「誰の稼ぎで喰わせてもらっていると思ってるんだ」「俺以上に稼いでみろ」といった常套句で、よく淑恵さんを貶めていました。妻を管理したがった夫は、淑恵さんが外で働くことにいい顔をしません。もともと勤めていた自治体正職員は、夫の転勤で辞めさせられました。でも生活費として渡されるのは計月5万円だけ。全然足りません。家計を補うため、淑恵さんはバイトや非正規で働いてきました。正社員に誘われた時は、夫の反対で辞退しました。 実は、夫の浮気は結婚前から始まっていました。淑恵さんはうすうす気付いていましたが、いずれ相手とは切れるだろうと楽観視していました。相手の女性は、当初は既婚者で、夫が淑恵さんと結婚した後に離婚したようです。結婚から10年以上経ってから探偵に頼んで、浮気相手が昔と同一人物だと確認。淑恵さんはようやく重い腰を上げて、弁護士に離婚調停を頼んだのでした。
◆会計年度任用職員の試験に合格し続け ところで仕事ですが、淑恵さんは目指した国家資格を取得できませんでした。40代半ばで、資格も取れず、就職も決まらず、困っていた時。たまたま、かつて仕事で知り合った人と電車で再会しました。仕事を探しているとこぼしたら、その人が、市内の団体職員の口を紹介してくれました。淑恵さんはそこに勤めながら、ダブルワークでヘルパーとしても働きました。ホームヘルパー1級の資格は、かつて結婚期間に取得していたものです。1時間単位で働けるので、終業後に2本入れるなどして収入を増やしました。さらに調理師免許も取得、知人の喫茶店を手伝った時期もありました。 公的施設で1年ほど事務職として働いた後で、公的機関の嘱託職員に応募したのは2007年でした。非正規職員なので、給料はそれほど高くありません。「もし、家賃が5万円かかっていたら、きつかったと思う。自宅があったから何とかなった」と振り返ります。3年限定採用のはずが、幸運が重なって5年働けました。次の職場を考えていた時に、いまの自治体の採用試験を見つけました。 55歳での受験で、受からないかもと心配しました。でも、前の団体で、同じ分野の専門家として働いていたのが評価されたようです。2012年に嘱託職員として採用されました。専門性と職務内容は変わらずに、組織を移動した格好です。嘱託職員の定年は63歳でしたが、2021年に会計年度任用に制度が変更。再び試験を受けて、会計年度任用職員になりました。1年更新の3年が上限なので65歳までの任用期間。でも65歳時にも再び試験に合格。任期は68歳までですが、特殊な専門性があるため、次の試験も通るかもしれません。そうしたらなんと、71歳まで働き続けられます。 「今の自治体の制度では、副業OKなんです。だから、できれば自分で事業を始めて、個人事業主になりたいと思っています」。副業をするにしても、本業である自治体の会計年度任用職員の立場と収入はキープした上で、です。いまの職務を単純に業務委託で切り出したら、いまの給与よりぐっと減ると見ています。いくつかの自治体から同じ業務を請け負っても、どこも予算が少ないので受託費も安いはず。それでは、とても暮らせないでしょう。「年金もギリギリなので、75歳まで働くかなあと思います」