動物行動学のプロが”極端な怖がり”保護犬の預かりさんに。初対面で「やらなかったこと」
なぜ「預かりさん」を引き受けたか
動物行動学の専門家である高倉はるか先生が、なぜ「預かりさん」をすることになったのか。 それは、はるか先生と、一般社団法人動物支援団体「ワタシニデキルコト」(以後「ワタデキ」)の代表 坂上知枝さんとの出会いがきっかけだ。 FRaU webの連載などを通じて知り合ったおふたりは、アニマルウェルフェアの基本的考え方が近いことから、はるか先生は時々「ワタデキ」のイベントを手伝うようになった。 坂上さんはセンターや一般の人からの相談で動物を引き受けた際、病気や障害で高額の医療費がかかる子や治る見込みがない子など、里親に出せない子は、自分や妹家族などと手分けをしてそれぞれの自宅で世話をしている。 また、引き受けてすぐには預かりボランティアには託せないので、精神状態や健康状態を把握し、治療を終えて健康になるまでは自宅での飼育となる。 咬傷犬や一般的な家庭生活を経験していない為に散歩ができない、生活音が怖いなどの問題行動がある子もまた、改善するまで里親には出せない。 千葉、福島と飛び回って保護活動をしながら、自分の仕事(動物とはまったく関係のない業務)をし、保護動物の面倒(現在は4頭の犬を朝晩散歩させ、水頭症や目や鼻のきかない子、ミルク飲みの仔猫など合計15匹の猫の世話)を見てと、坂上さんの毎日に終わりはない。 問題行動のある子を「預かりさん」宅で改善できたなら……。 一方の高倉はるか先生の仕事は、犬や猫の問題行動からその原因を探り、トレーニングや環境改善によって問題行動をおさえる、または直すことである。 トイレのかわりに部屋のあちこちでおしっこをしてしまうのも、家族が外出しているときに家をぐちゃぐちゃにしてしまうのも、チャイムが鳴るたびにすごい勢いでほえまくるのも、すべて原因があり、おそらく原因のほとんどは、飼い主の側にあるというから、興味深い。 つまり問題行動は、犬、猫自身に原因があるケースはほんのわずかで、ほとんどの場合、飼い主の「問題行動」を改善する=環境を整えれば直る、というのである。 ならば、どうしても人に慣れずに、譲渡しづらい成犬も、扱い方や環境次第で人好きにすることも可能なのではないか。 はるか先生の答えは、「成犬になってからだと時間はかかるかもしれないけど、やってみましょう」だった。 こうして、これまでワタデキとボランティアさんのみで改善を試みてきた犬の「問題行動」の改善を、はるか先生が「預かりさん」として入り、譲渡できるようにしてみる、という実験的取り組みが始まった。 以下、はるか先生の言葉でお伝えする。