アギーレジャパンの“新顔第2弾”は戦力となるか?
FWでは3シーズンぶり2度目となる2桁ゴールをすでに達成している小林悠(川崎フロンターレ)が、満を持して初招集された。先月23日に27歳になった小林は、麻布大学附属渕野辺高校で同期の太田とともに全国高校選手権に出場。当時はトップ下もしくはサイドハーフが主戦場だったが、進学した拓殖大学でFWにコンバートされたことで得点能力が開花。4年生に進級する前に、才能を高く評価したフロンターレへの加入を内定させていた。 FWという未知のポジションを与えられて以来、小林はペナルティーエリア内での動き出しの速さと巧みな駆け引きでゴールを量産するFW佐藤寿人(サンフレッチェ広島)をお手本に掲げて精進してきた。佐藤が元イタリア代表FWフィリッポ・インザーギ(現ACミラン監督)の泥臭いプレーに憧れ、アイドルとして崇めてきたのは有名な話だが、小林もインザーギのプレー写真を携帯電話の待ち受け画面として設定していた時期がある。 佐藤とインザーギの件を、実は小林は知らなかった。偶然にも同じプレースタイルに憧れた理由を、照れ笑いしながらこう語ってくれたことがある。「ゴール前の1点で合わせるパターンや、こぼれ球を押し込むパターン。どんな形でもゴールはゴールですし、シンプルに決め続けていたインザーギは本当にすごいと思ったので」。 2012年シーズンの途中に就任した風間八宏監督のもと、スリートップの右という新境地でさらなる成長を遂げている5シーズン目の小林を、水沼氏も高く評価してきた。 「相手の最終ラインの背後を取るのが非常に上手いので、そこへパスが出てくれば必ず大きなチャンスが生まれる。フロンターレには中村憲剛をはじめとするいいパッサーがいるので、その意味でも風間監督のサッカーに合っているのであろう。左右両足を使えるだけでなくヘディングも強いし、ここにボールがくるという嗅覚に導かれたポジショニングも非常にいい。4月の代表候補合宿に選出されながら左太もものけがで辞退しているだけに、一度チャンスを与えて欲しいと思っていたが、小林にとってのベストポジションである右のサイドは本田圭佑と重複する。どのような起用になるのか、興味深く見たい。前回のようなサプライズというか、まったくのフレッシュという選手はいなけれども、人をどんどん入れ替えながら新陳代謝を図りたいとする意図は伝わってくる。この流れは11月の国際試合でも変わらないだろう」 9月の初陣は1分け1敗に終わっている。選手たちは今週末の試合を終えてから順次集合し、6日から新潟県内で短期合宿を開始させる。来年1月のアジアカップを中期的な目標に据えながら、アギーレジャパンにおける初勝利という短期的な目標も貪欲に追い求めていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)