アギーレジャパンの“新顔第2弾”は戦力となるか?
9月の初陣では所属チームでサブ的な存在だった坂井達弥(サガン鳥栖)がサプライズ招集されたセンターバックには、今回も代表キャップ数が「0」の塩谷司(サンフレッチェ広島)、昌子源(鹿島アントラーズ)の2人が名前を連ねた。 25歳の塩谷は徳島商業高校から進んだ国士舘大学の4年次に、コーチに就任した元日本代表DFの柱谷哲二氏の指示でそれまでのボランチからセンターバックへ転向。182cm、80kgの体に眠っていた潜在能力は監督に就任した柱谷氏に誘われて入団したJ2の水戸ホーリーホック、2012年夏に完全移籍したサンフレッチェとステージが上がるたびに開花していった。 1対1の強さやカバーリングの速さに象徴される身体能力の高さに加えて、今シーズンは6ゴールをあげるなど得点能力も搭載しつつある塩谷は「センターバックにコンバートされなかったら、いまごろは社会人のクラブでサッカーをしていると思う」と恩師である柱谷氏への感謝の思いを忘れない。柱谷氏自身も「絶対に日本代表に入れる器を持っている」と断腸の思いとともにサンフレッチェへ送り出した時点で、愛弟子の将来に太鼓判を押していた。
鳥取県の米子北高校から加入して4シーズン目となる21歳の昌子は、昨シーズンまではわずか4試合に出場だけだった。しかしながら、世代交代を一気に推し進めたいとするアントラーズの方針のもと、今シーズンの開幕からレギュラーに抜擢。26試合すべてで先発し、今回もアギーレジャパンに招集された同期のMF柴崎岳とともに新生アントラーズをけん引している。 アントラーズのセンターバックには、今シーズンからタイプレミアリーグのテロ・サーサナでプレーする元日本代表の岩政大樹が不動のポジションを築いてきた。アントラーズの伝統を受け継ぐベテランとの契約更新をあえて見送った点に、182cm、74kgとサイズもある昌子へ寄せるフロントの期待の大きさが伝わってくる。そして、チームを去る岩政からかけられた言葉は、いまも昌子を支える至言となっている。「お前の潜在能力は高い。自信を持ってプレーしれば、鹿島を背負えるセンターバックになれる」。 塩谷と昌子はアルベルト・ザッケローニ前監督の下で4月上旬に行われた、日本代表候補合宿にも招集されていた。この段階でアギーレ監督が日本代表に呼んだ理由を、前出の水沼氏はこう推察する。「ワールドカップで中断するまでのリーグ戦で見せた塩谷のパフォーマンスを考えれば、代表に呼ばれて当然の選手と言っていい。1対1に強く、闘争心も旺盛な昌子は、ロンドンオリンピック代表の山村和也をはじめとするチーム内のライバルを抜いて試合に出続けていることで得た自信がプレーにも表れている。 4年後のワールドカップ・ロシア大会を考えれば、若いセンターバックを育てていく作業は絶対に欠かせない。アギーレ監督だけではなく日本サッカー協会も同じ思いを抱いているはずで、現段階で塩谷や昌子にチャンスを与えれば今後の伸び代がさらに広がり、4年間でもっといい選手に成長する可能性も膨らむ。前回呼ばれた坂井を含めて、そうした考えのもとで選ばれた意味合いもあると思う」。