「日本はチームバスケです」…バスケ代表・吉井裕鷹(26歳)がアジア杯予選で語った胸中「コミュニケーションが大事」「話さないとチームがつながらない」
11月21日と24日に行なわれたバスケットボールのアジア杯予選。日本代表チームはモンゴルとグアムに連勝を収め、来夏に開催されるアジア杯の出場権を獲得した。パリ五輪という大舞台を終え、新たなフェーズに入った日本代表。五輪ではチームの「縁の下の力持ち」として活躍した“いぶし銀”が描く代表の未来図とは。《全2回の2回目/富樫勇樹編を読む》 【写真で検証】「こ、これは…メチャクチャ重そう…身体張ってる!」“雑草魂”吉井裕鷹のフランス戦の超絶ディフェンス…大金星目前だったパリ五輪での日本代表チームの激闘も見る(50枚超) 吉井裕鷹は鬼の形相を浮かべていた。 11月24日のグアム戦後、取材エリアに足を踏み入れたときのことだ。 代表の国際大会ではロッカールームへ戻る前に取材を受けないといけない。試合後にシャワーを浴びて頭を冷やす時間のあるBリーグとは、そこが異なる。だから、選手たちが気持ちを切り換える前の生々しい殺気が、その場には張り詰めている。ものすごいスピードで取材エリアを駆け抜けようとした吉井を呼び止めたが、表情の厳しさは変わらなかった。
グアム戦後は「こんなバスケ、してちゃだめです」
確かに、世界ランキングで59ランクも下につけるグアムとの試合では思わぬ苦戦を強いられた。最大19点差までリードを広げたのに、第4Qで相手に12連続得点を許すなど失速。一度は同点に追いつかれていた。最終的には83-78で下し、来夏に行なわれるアジアカップ本選の出場権を無事につかんだが、数十点差で負けた後に見せるような険しい表情で、吉井は短く試合を振り返った。 「見ての通りです」 終盤に追い上げられた原因はどこにあるのか。そうたずねると、吉井の答えはこうだった。 「やはり僕が外して、雰囲気が悪くなりました。こんなバスケ、してちゃだめです」 ほどなくして、吉井はその場を後にした。 彼が挙げたのは第4Qの序盤のワンシーンだ。68-53とリードしている状況で、吉井が相手のパスをカットして、速攻をしかけた。最終的に相手のファールを受けたとはいえ、アジア最高位でパリ五輪に出場したチームの選手としては、あの速攻からのレイアップシュートは決めきらないといけなかった。 そこまで悔しがったのは、強い責任感のためだろう。 3日前に行なわれたパリ五輪後の最初の試合となったモンゴル戦でも、責任感が表われたシーンが度々見られた。プレーが止まるごとに、初代表の若い選手たちを集めてはハドル(円陣)を組んでいたし、トム・ホーバスヘッドコーチ(HC)とこまめにコミュニケーションを取る姿があった。 世間の人たちは、昨年の沖縄W杯や今年のパリ五輪を経て、「中心選手としての自覚が新たに芽生えたのではないか」と見ているかもしれない。 ただ、本人はそうではないと考えている。プロ選手として経験を積み、ホーバスHCのバスケットボールに慣れてきたことで、本来持っていた責任感や危機感を言動で示す「余裕ができた」ことが大きいという。 「とにかくコミュニケーションが大事です。話さないと(チームが)つながっていかないので。意識してハドルを組んだりすることなどが、メチャクチャ大事になってくると思います。目に見える部分以外のところで、チームをしっかりまとめる必要がある。そのあたりの姿勢は、アルバルクで培わせてもらったものです」 吉井は練習生時代を含めると、計5シーズンもアルバルク東京で過ごした。そこではヨーロッパ・バスケの源流である旧ユーゴスラビアの一翼を担っていたセルビア出身のルカ・パビチェビッチHCや、強豪リトアニア代表監督も務めたことのある、同国出身のデイニアス・アドマイティスHCの下で厳しい指導を受けてきた。 「アルバルクでやってきた経験が、僕のバックグラウンドにはあって。それが自信としてあります」
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