ウクライナの謎の新型ドローン「パリャヌィツャ」がロシアの航空基地を狙う
ロシアがウクライナに対して長距離ドローン(無人機)やミサイルによる攻撃を強めるなか、ウクライナも同じやり方で応酬している。ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は8月末、国産の新型長距離兵器「パリャヌィツャ」を初めて戦闘で使用したと明らかにした(編集注:その後、ロシアの占領下にあるクリミアの軍事目標に対して使われたと報じられている)。ゼレンスキーはこの兵器を「ロケットドローン」と呼んでいる。 ゼレンスキーはパリャヌィツャについて、ミサイルを発射するロシア軍機を離陸前に地上でたたき、ウクライナを守るだろうと説明している。「矢を落とすのでなく射手を殺す(killing the archer, not the arrows)」と呼ばれるこうしたアプローチはウクライナで広く支持されており、実際にいくつか目覚ましい成果を収めてもいる。8月22日、ロシア南西部ボルゴグラード州のマリノフカ航空基地に対して行ったドローン攻撃では、衛星画像の分析から複数の戦闘爆撃機が撃破されるか損傷したとみられている。 パリャヌィツャに関して、これまでにどんなことがわかっているのか。これはドローンなのか、ミサイルなのか、それともまた別のものなのか? これは本当に、「射手を殺す」手段として、状況を改善することに役立つのだろうか。 ■名前に込められた意味 名前の「パリャヌィツャ」はウクライナの主食のひとつで、伝統的には生地を暖炉の中でなく、その前の石などを敷いた部分で焼くパンだ。アップルパイが米国を象徴するように、パリャヌィツャはウクライナ人のアイデンティティーを象徴する。また、この単語はウクライナ語話者以外には正確に発音するのが難しいので、この戦争の初期にはロシア人の破壊工作員や潜入者を見破るためのテストに使われた。 新兵器のパリャヌィツャという名前には「ウクライナの純国産兵器」という意味合いがある。純国産ということはつまり、米国製のATACMS弾道ミサイルや英国製のストームシャドーなど、支援国から供与されているミサイルと違って、ロシア領内の目標を攻撃するのに制限もなければ外国に許可を求める必要もないということだ。 ゼレンスキーの投稿に添付されている動画の説明によれば、パリャヌィツャはロシア国内の航空基地20カ所かそこらに到達できるということなので、射程(飛行可能距離)は少なくとも600km程度はあるようだ。ウクライナは射程600km以上のドローンを何種類か保有しており、なかには1600kmを超えるものもある。 ウクライナでは小規模なドローンメーカーの防衛業界が活況を呈しており、驚くほど多種多様な攻撃ドローンが製造されている。アナリストのH・I・サットンは、ウクライナの長距離攻撃ドローンを24種類前後確認している。ただ、新登場のパリャヌィツャは、従来のドローンで満たされていなかった「ニッチ」に適合したもののようだ。