ウクライナの謎の新型ドローン「パリャヌィツャ」がロシアの航空基地を狙う
「射手」を仕留めるにはある程度の速度も必要になる
■逃げられる前に仕留める ウクライナによるドローンを用いた長距離攻撃の多くでは、ロシア国内の石油・ガス貯蔵施設や製油所が目標にされており、ロシアの石油産業をゆっくりと、だが着実に焼き払っている。こうした目標を攻撃する場合は、時速160km程度で巡航するドローンと、マッハ5(音速の5倍、時速約6200km)で飛翔する弾道ミサイルの有効性はあまり変わらない。目標は固定されていて、逃げることはないからだ。一方、目標が航空基地の場合は事情が違ってくる。航空基地にも燃料や弾薬の保管庫といった静的な目標はあるものの、航空機自体は必要に応じて即座に退避できるからだ。 マリノフカ航空基地に対する攻撃では、飛来してくるドローンが探知されると、駐機中だったロシア軍機の大半が飛び去ったとされる。一部の機体はメンテナンスなどの問題で明らかに逃げ遅れており、ほかに滑空爆弾などの弾薬が置かれていた格納庫も破壊されている。ドローンの速度がもっと速ければ、駐機中のロシア軍機は退避のための時間的猶予がさらに厳しくなるので、もっと多くの機体が被害を受けていたかもしれない。 ジェットエンジンを搭載すれば、ドローンの速度はどれくらい高まるのだろうか。イランで開発され、現在はロシアでも量産されている攻撃ドローン「シャヘド136」(特徴的なエンジン音から「モペッド」という俗称がつけられている。ロシアでの名称は「ゲラニ2」)は時速185kmほどで巡航する。イランはチェコ製ターボジェットエンジンを搭載した改良版「シャヘド238」も生産していて、こちらは最高時速が480km以上に達する。ロシアはシャヘド238の技術も利用できるが、より簡素で、1機3万ドル(約430万円)程度とみられるより安価なシャヘド136を引き続き主に使っているようだ。 製造のしやすさと低コストというのは非常に重要な点だ。パリャヌィツャも、射程圏内にあるロシア軍のどの航空基地に対しても大量攻撃を仕掛けられるほど、量産できるようになったあかつきに初めて有効なものになるだろう(編集注:カミシンによると、リトアニアがパリャヌィツャの生産に1000万ユーロ=約16億円=を供与することになっている)。