原発最大限に活用、依存低減の方針撤回-エネルギー基本計画素案
(ブルームバーグ): 経済産業省は17日、次期エネルギー基本計画の素案で、原子力発電所の依存度を可能な限り低減するとしていた従来の文言を削除し、原発の活用を最大限に進める方針を打ち出した。
同省は同日午後、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の会合に提示した素案で、「再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用することが必要不可欠」との姿勢を示した。政府は少なくとも3年ごとにエネルギー基本計画を改定しており、2024年度中の次期計画策定を目指している。
福島第1原発事故を受けて政府は14年の計画改定時に原発を「可能な限り低減させる」との表現を初めて盛り込み、その後維持してきた。一方で、二酸化炭素(CO2)の排出削減やロシアのウクライナ侵攻をきっかけとした資源価格の上昇、安定的な電力供給の確保という観点から、産業界を中心に原発への回帰を求める声が強まっていた。
資源エネルギー庁長官の村瀬佳史氏は会合の冒頭発言で、バランスのとれたエネルギー基本政策を目指す必要があるとした上で、再エネや原子力を「ともに最大限活用することが重要だという大きな方向性をいただいた」と評価した。
今回の素案には、既存原発の活用に加えて次世代革新炉の開発・設置に取り組む方針も盛りこんだ。今後運転期間の上限に達して廃炉が増えることを踏まえ、廃炉が決まった原発を持つ電力会社の原発敷地内での次世代革新炉への建て替えの推進も盛りこんだ。
経団連は10月、再生可能エネルギーや原子力などクリーンな電源の導入拡大に向けた道筋を明確に示すことが必要などとする次期基本計画の策定に向けた提言を公表していた。
提言では、50年までの脱炭素目標の達成には再エネの主力電源化だけでなく、安全性と地元の理解を前提に原子力を「最大限活用する必要がある」と訴えた。さらに40年代から運転終了する原発が出てくることから新設に必要な時間を考慮すると、「早急に建設を具体化すべき」との考えも示した。
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Shoko Oda