国策・中韓に日本奮闘…技能五輪国際大会、愛知大会に残した課題
専門家固定、ノウハウ蓄積
また中国や韓国はエキスパートが長年固定されているため、各大会を通じたノウハウなどが蓄積される。一方日本では大会の都度企業がエキスパートを出している。出場企業が変わるたびにエキスパートも交代するため、その場限りとなり、ノウハウが蓄積されにくく戦略面で弱くなってしまう。全てにおいて企業任せになっている面が拭えず、資金力のある大手企業でなければ国際大会出場は難しいと言える。 そうした中、26年の上海大会に次ぐ28年大会の開催地が愛知県に決定した。日本では21年ぶりの国際大会の開催となる。技能五輪に挑戦する企業や選手を増やす必要があり、社会的な技能尊重の機運醸成が求められる。技能五輪を管轄する厚生労働省の安達佳弘参事官は「オールジャパンで成功に向けて準備したい」と語る。またモノづくり関連の日本の主力職種だけでなく「介護・医療サービスといったリヨン大会で日本勢が出場していない職種にも参加したい」と意欲を示す。 地元企業も盛り上げに一役買いそうだ。トヨタ自動車の松山洋司総務・人事本部副本部長は「日本で技能五輪の知名度は低い。愛知県開催はたくさんの人に知ってもらう意義がある。とはいえ、どこの開催地でも脈々とやり続けているので競技に取り組む姿勢は変わらない」と語る。デンソーの海老原次郎経営役員は「26年の上海で中国国内は相当盛り上がるはずだ。28年に向けて日本国内が盛り上がるように準備していきたい」と意気込みをみせる。 今大会のメダル獲得選手からは後進の育成に精進したいとの声が上がる。再生可能エネルギー職種で金メダルを獲得したきんでんの郡安拓海選手は「うれしい気持ちを後輩にも味わってもらいたいので指導に励みたい」と述べた。構造物鉄工で銅メダルだった豊田自動織機の天野玲選手は「次はコーチになる。経験を後輩に伝えて自分を超える選手を育てたい」と語った。大会を通じて得た技術やノウハウを次代に引き継いでいく。