いま知っておきたい「燃料デブリ」のアレコレ 原発事故から13年8カ月で取り出しに成功 2024年は廃炉に向け大きなステップ
取り出されたデブリは今どこに?
取り出された燃料デブリは、11月12日に茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構(JAEA)の大洗原子力工学研究所に運び込まれた。現在、X線などを用いた分析作業が行われているところ。今後、この施設のほか、同じくJAEAの原子力科学研究所、また、日本核燃料開発株式会社(NFD)、MHI原子力研究開発株式会社(NDC)の4つの施設で分析が行われる。 取り出したデブリの内部から「当時の温度」「固まり方(ゆっくり?急激?)」などが分かることで、デブリの分布の仕方や「固さ」などの推定につなげられる可能性がある。レーザーなどで切ることができるものなのか、細かく切り出して取り出すことが可能なのかによって、今後のデブリ取り出しの方法を考え直す必要があるため、取り出しや分析が無事に進めば、廃炉に向けての重要なデータが得られる見通し。また、デブリの採取を複数箇所で繰り返すことで「どこにどんなデブリがあるか」を推定できると期待されている。格納容器内の「デブリの詳細な分布」が分かれば、作業計画もより実態に合ったものに見直すことができる。 「今後の取り出しの仕方」「作業計画」を立てるためにも、採取されたデブリの分析にかかる期待は大きい。
分析の中心となる「JAEA」って何者?
JAEAは、国立研究開発法人のひとつ。公共上の理由から確実に実施されることが必要な事業を行うために法律に基づき設置される「独立行政法人」のうち、研究開発を行う法人のことで、その運営費は国庫から支出される運営費交付金や補助金が大部分を占める。JAEAは「原子力に関する総合的な研究開発機関」として、国が策定した目標に従って研究開発を行っている。茨城県や福島県だけでなく、北海道・福井県・岡山県などにも施設を持っていて、燃料デブリ以外にも、新型の原子炉の研究開発や放射性物質の処理・処分に関する研究も行う。 また、1979年にアメリカ・スリーマイル島の原発事故で発生した燃料デブリの研究も行ってきた。デブリの線量は極めて高く、厚さ1メートルの鉛入りガラス越しで取り扱われるなど、施設の中でも特殊な設備がある場所で実施される。 福島テレビがこれまでに実施したJAEAへの取材では、 ■スリーマイル事故:溶け落ちた燃料が圧力容器のなかに留まった ■福島第一原発事故:燃料が圧力容器を突き破り格納容器の底にあるコンクリートと混ざり合った という点に違いがあり、研究者は「核燃料が格納容器の下に流れコンクリートと高温で反応したというのは福島第一原発事故以前には前例がない」としている。 JAEAは、核燃料の主な成分であるウランに、金属やコンクリートなどを混ぜた「模擬デブリ」を使った研究を進めている。様々なパターンでこの「模擬デブリ」を作っていて、第一原発から取り出された燃料デブリがどのパターンに近いかなどを分析しながら、事故時の状況を明らかにしたい考え。