受験前にいきなり閉鎖!すでに授業料「100万円以上」支払った生徒もいたのに…老舗予備校「ニチガク」にみえていた「破滅の兆候」
夏ごろから始まった給与支払いの遅延
「昨年の春から夏にかけての大量退校は経営者の誤算でした。ニチガクは推薦入試を受験する生徒を対象に『塾長自らが指導する特別講座』、小論文と面接の対策講座をウリにしていました。例年通り、30人程度は集まると見込んでいましたが、宮正塾長が昨年引退し、新しい先生になると7~8人程度しか申し込まなかった」 小論文・面接対策講座は、一括で支払われた授業料とは別に30万円ほどの費用がかかる。想定していた受講人数に達しなかったことで目論んでいた収入が得られなかった。そのため、同年の夏ごろには一部の講師の間で給与支払いの遅延が始まった。前出のニチガク関係者は、夏期講習の申し込み時期を思い出す。 「7月30日に『給与支払いが遅れる』というメールが届きました。夏期講習の申し込み締め切りは7月前半です。講習の申し込み金が入金されている時期のため、おカネに困っているわけではないはず。これは生徒から集めた講習費用を早々に使い果たしてしまったのではないかと推測しています」(前出のニチガク関係者) さらに、ニチガクの収益システム自体にも課題があった。 「授業料は月謝制ではなく、1年単位で契約を更新し、最初に全額を受け取る形式でした。そのため、毎月安定した収入が見込めるわけではなく、一度に得た収入を使い果たしてしまうと運営が立ち行かなくなります」(同) こうしたずさんな管理が、最終的に破綻へと追い込んだとみられている。
時給は4000~6000円
「人件費も経営を圧迫していたと思います。私の感覚だと講師の給与がほかの塾よりも高いんです。だから、他の講師たちも予備校の“いい加減さ”は知りつつ、辞めることができなかったのでしょう」(前出の森川さん) 講師の給与は時給4000~6000円の範囲が一般的だったが、特に高額報酬が支払われていたのは医学部コースを教える講師たちだ。 「河合塾からヘッドハンティングしてきた講師たちです。ただ、人気講師、というわけではなかったそうです。それでも一般の講師より給与が高く設定されていました」(前出のニチガク関係者、以下「」も) 正社員は10人にも満たず、生徒の指導にあたる講師はその多くが非正規だった。おまけに生徒たちを支えていたのはアルバイトのチューターたちだ。 「チューター制度があるから入塾を決めた生徒は多いんです。東大や有名私立大に通うチューターたちが受験対策や勉強方法を指導します。チューターは高学歴な大学生がそろっており、親身に指導してくれるんです」 チューターの中には有名大学に進学したニチガク出身者も多い。だが、その重要な役割と担うチューターたちの給与も、未払いの状態にあるとみられる。 「運営側は辞められると困る講師に優先的に支払い、チューターたちなど替えがきく人を後回しにしているのではないでしょうか」(前出の森川さん) 運営会社の不誠実な態度は従業員だけではなく、生徒たちにも向けられていた。 複数の関係者が「ウソばかりだった」と述べるその経営実態とは――。 つづく後編記事『「合格実績は虚偽の可能性」「塾長の雑談小論文講座に30万円」…関係者が憤る「ニチガク」の嘘とごまかし』で詳報する。
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