「要求定義」から自宅リノベを始めてみた。建築家とアイデアふくらみ想像以上の仕上がりに!【後悔しないマンションリノベのコツ】
スタートアップ企業でUXリサーチャーとして働く松薗美帆さん。昨年、都内にある築41年のマンションをリノベーション。パートナーとの新生活をスタートさせました。 建築家とリノベーションのプランを検討するにあたり、松薗さんが最初に着手したのが「要求定義」。仕事でサービスの開発や改善を行う際に欠かせないプロセスを、家づくりに導入したといいます。 家づくりの要求定義って、何をどうまとめればいいのでしょうか? 建築家の反応は? やってみて分かったことは? やりたいことを実現するための要求定義のポイントを、松薗さんに伺いました。
「曲線の壁」で分かれる、表と裏の空間
ともあれ、まずは完成した家を見てみましょう。 松薗さん、建築家の坂田裕貴さん・marieさんの3人チームでつくりあげた住空間。松薗さんたちが暮らしに求める機能はもちろん、坂田さん、marieさん発案の驚きのアイデアも随所に盛り込まれています。
設計を担当した坂田さん(左)、marieさん(右)にもお話を伺った。
最大の特徴は、フロア全体に立てられた「曲線の壁」です。
円の内側は「ホールスペース」。ソファに座って景色を眺めたり、読書をしたり。使い方を限定しない抽象的な空間で、松薗さんたちが暮らしながら用途を発見していくスペースになっている。
等間隔の間柱が、空間に一定のリズムを刻む。
一方、円の外側にはプライベート空間と生活機能が集約されている。ここは松薗さんの寝室兼ワークスペース。
そこから本棚のある通路を抜けてキッチンへ。さらに進むと洗面やパートナーの個室などがある。
円の内側は「均一さ」を意識し、バーチ材で統一。一方、外側は各スペースの機能や、松薗さん、パートナーの趣味嗜好を反映させた内装になっている。
L型に折れることで分断されていた空間を、曲線がゆるやかにつないでいる。
ひとつながりの壁の「表」と「裏」を行き来しながら暮らす、不思議で楽しい住まい。かくもユニークなアイデアは、いかにして生まれたのでしょうか? 松薗「初回の打ち合わせの時に話していたのは、室内に“縁側”のような余白スペースをつくること。また、L型の形状を活かして、生活の機能と余白スペースを分けることでした。L型に曲線を重ねるアイデアは、2回目の打ち合わせの時に坂田さんからご提案いただいたものです。思いもよらない発想に感動して『もう、これしかないな』と」 坂田「生活機能と余白スペースを分ける際に、普通に直線的な壁を立ててしまうと、幅が均一になり空間にメリハリをつくることができません。図面を眺めながら思案するうちに『もしかしたら、ここに正円を描けるんじゃないか』と閃いて。CAD(コンピューターで図面作成を行うツール)で描いてみたら、本当にすっぽりとおさまりました。円が外側に膨らむ部分は窮屈になる懸念もありましたが、棚を置きつつ人が通れるくらいのスペースは確保できています。今回は現地での実測がかなり正確にできていたことも、プランを実現するうえで大きなポイントでしたね」
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