「要求定義」から自宅リノベを始めてみた。建築家とアイデアふくらみ想像以上の仕上がりに!【後悔しないマンションリノベのコツ】
大量の本は「仕事で使う本」「大学院の研究で使う本」「趣味の本」と大きく3種類に分類し、仕事の本は個室スペースの本棚へ、研究や趣味の本はリビングの本棚へ置いている。「marieさんから『用途ごとに分けて置くのはどうか』とご提案いただきました。目的の本を、使う場所ですぐに取り出せて便利です」と松薗さん。
左奥の扉はパートナーの個室。パートナーのオンライン会議の声が気にならないよう、お互いの個室を離して配置している。
最も気に入っている場所は、ホールスペースのソファ。目の前には本棚や観葉植物など、松薗さんの好きなものが並ぶ。
建築家がアイデアを出しやすくなる要求定義を
はじめに要求定義をまとめる利点は、施主と建築家の目線合わせのほか、言った・言わないのトラブル防止、大まかな費用の共有など、さまざまです。 また、設計側から見ても、こんなメリットがあると坂田さんは言います。 坂田さん「通常の場合、僕らは最初に施主さんにヒアリングをして要求を引き出していきます。このプロセスには結構な労力と時間がかかるので、お客さん側で要望やイメージをある程度まとめておいていただけるのは有り難いですね。そのぶん、こちらもクリエイティブな作業に時間を使えて、より良いアイデアが生まれやすくなると思います」 一方で、松薗さんには反省点もあるのだとか。 松薗さん「かなり細かいところまで、具体的に書きすぎてしまったかなと。最初に坂田さんたちを含む複数社に要求定義をお伝えした時、会社さんによってはそのまま受け取られて、プロならではの提案があまり出てきませんでした。 少なくとも、最初の時点で間取りまで描く必要はなかったですね。『個室と個室は離してください』と伝えるくらいに留めておいて、具体的な間取りについては専門家にお任せしたほうが魅力的なプランをご提案いただけると思うので」 松薗さんが言うように、具体的すぎる要求定義は建築家の思考を制限してしまうかもしれません。最初の段階では詳細なプランではなく、住まいに求めることや理想の暮らしを抽象化して伝えたほうがよさそうです。 ともあれ、精度の高い要求定義が、満足度の高いアウトプットにつながるのは確か。リノベーションに限らず、家づくりのプロセスに取り入れてみてはいかがでしょうか? ●取材協力 松薗美帆さん a.d.p Inc.
榎並 紀行(やじろべえ)
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