子どもに人気の「シルバニアファミリー」が大人も夢中にさせる理由とは
人形とお出かけ「シル活」が活発に
かわいらしい動物たちの人形を中心としたドールハウスシリーズ「シルバニアファミリー」に、大人の女性が夢中になっている。来年で発売から40年を迎える息の長い子ども向けのおもちゃに、なぜ大人が魅了されるのだろうか。 【写真】シル活実践者のribbonさんの分身バニア「ひつじちゃん」と夫の分身バニア「くま夫」 11月上旬、東京都渋谷区の複合施設「渋谷ヒカリエ」に設けられたシルバニアファミリーの期間限定店舗。新作などを目当てに来た人たちでにぎわっていた。 シルバニアファミリーは、ウサギやクマなど動物の仲間による森での暮らしを表現した、子ども向けの人形遊びのシリーズで、エポック社(東京)が1985年に発売した。ディテールにこだわった人形は累計110種以上あり、2億体以上の売り上げを誇る。世界70以上の国・地域で愛されている。 会場には大人の女性の姿が目立つ。幼い頃からファンだという都内の大学生、田口小粋さん(19)は「一緒に旅行したり、服を作ったりして楽しんでいる。癒やされる存在」。横浜市の主婦(47)も「子どもの頃から憧れがあったが、当時は買えなかった。いまは大人の推し活ブームなので、持ち歩いても恥ずかしくない」とほほえみ、バッグにぶら下げていた人形を見せてくれた。
同社のマーケティング担当、鈴木晴子さんによると、発売当初から主要なターゲットは3~9歳で変わらず、大人向けに商品を開発しているわけではないという。だが、大人が人形と一緒に出かけるといった活動は「シル活」と呼ばれるようになり、コロナ禍以降活発になった。 大人の趣味になってきた背景について、鈴木さんは「SNSの影響が大きい」とする。人形と一緒にお出かけしたり、自作の洋服を着せたりした写真を自身のSNSにアップするファンは増えており、同社では2020年からこうしたファンの中から公式アンバサダーを委嘱する。
人気は漫画作品にも波及している。昨年から連載が始まったコメディー漫画「ギャルがシルバニアファミリーを溺愛したら。#ギャルバニア」(講談社)は、シルバニアファミリーをこよなく愛するギャルと手芸部の女子高生との交流を描く。 作者の岡野く仔さんに大人が夢中になる理由を聞くと、「種類が多く、誰でも必ず推しが見つかる。持ち運べるサイズで、お守りのように頼りになる」と分析する。 大人の「推し活」の一つとしての認知度は最近、さらに上がってきている。 今年7~9月放映のTBS系連続ドラマ「西園寺さんは家事をしない」で、独身の38歳キャリアウーマンの主人公が自宅の秘密部屋に飾っているのはシルバニアファミリーのコレクション。自身のアクリルスタンドもそこに並べる。 ひうらさとるさんの原作漫画にシルバニアファミリーは出てこない。ドラマのプロデューサー、岩崎愛奈さん(41)によると、仕事に生きる主人公は徹底して家事を省いているキャラクターで、「ほかに時間を費やす何かがあるはずだ」と脚本家らと話し合い、この設定に至った。 シルバニアファミリーは発売以来「自然・家族・愛」がテーマで、「ドラマの『家族とは何か』というテーマにも合致した」という。「いろんな動物が仲良く暮らす優しいユートピアで、社会の多様性を体現しているのも魅力です」 経済的に自立した主人公が、自分の収入で買い集めたコレクションに囲まれ、自由な時間を満喫する姿に、女性視聴者から共感の声が集まったという。岩崎さんは「幼い頃に遊んだものへのときめきや癒やしを感じてもらえたのだろう。どんなものでも、好きなものを好きと言える時代になり、『好き』を持っている人こそ輝いているのでは」と話す。