北村有起哉、『おむすび』で念願だった朝ドラヒロインの父親役に「デビュー作で共演した麻生久美子さんと、朝ドラで夫婦役に。父・北村和夫と同じ俳優を選んだからこその決意」
噺家、硬派な刑事、テロリスト……ひとくせある演技で見る人に強烈な印象を与えてきた北村有起哉さん。現在放送中の朝ドラでは心配性の父親を好演している。家に帰れば2児の父で子育てに奮闘中という、名バイプレーヤーの素顔とは(構成=大内弓子 撮影=宅間國博) 【写真】北村有起哉さんが芝居に興味を持ったきっかけとは… * * * * * * * ◆親のスネはかじらないと心に誓った 「いつか朝ドラのヒロインの父親役を演じるんだ!」。若かりし頃、自分に暗示をかけるようにそんな目標を立てていました。 父(故・北村和夫さん)と同じ俳優という職業を自分で選んだからには、できるだけ親のスネをかじらず、自分の力でこの道を進んで認められたい。そんな決意を、誰もが知るドラマに出るというわかりやすい例を挙げて、掲げたのでした。 その野望が50歳になった今、『おむすび』でついに叶ったんです。ホッとしました。ただ、喜びはほんの一瞬。「ここで失敗はできないぞ」とすぐに気持ちが切り替わりました。いいパフォーマンスをしなければ、と気を引き締めて撮影に臨んでいます。 僕が演じている聖人(まさと)は真面目な人です。橋本環奈さん演じる娘の結(ゆい)のことも、過剰じゃないかと思うくらい心配する。また、頼まれたら断れずに頑張ってしまうんですよね。なかでも、再び神戸で暮らし始めてからの聖人にそれがよく表れています。
阪神・淡路大震災のあと故郷の福岡県・糸島に戻って実家の農業を手伝っていたものの、聖人としてはどうしても神戸に思いが残っていました。 やっぱり理容師をやりたいという気持ちがあったのはもちろん、それ以上に、お世話になった商店街の人たちのために何もできず、ずっともやもやしていたわけです。だから再びの神戸生活では、商店街のメンバーからすごく頼られる存在になっていく。 ただし、外ではしっかりしていても、家ではまったく頼りにならなくて肩身が狭いんです。家族のなかでの男性の立ち位置ってわりとそんなものですよね。僕も似ているなと思います。(笑) このドラマでは、平成という時代を通して家族や食などいろいろなエピソードが描かれますが、震災も大きなテーマです。阪神・淡路大震災のあと日本は何度も大きな災害に見舞われ、今年も能登で大きな地震と豪雨被害がありました。 こうしてドラマで震災について描き、自分というフィルターを通して何が起きたのかを知っていただくことも、役者の大事な役目。その意味でも、この聖人という役を本当に真摯に演じなければ、とあらためて感じます。
【関連記事】
- 【後編】北村有起哉「朝ドラヒロインの父役から、家に帰れば息子2人の父に。送り迎えや食器洗いが僕の担当。応援してくれた妻・高野志穂への感謝」
- 朝ドラ『虎に翼』制作陣が作品に込めた思い。「“弱い立場の人みんなに届け”と願いながら」「昔の話だけど昔の話じゃない」
- 福原遥 『舞いあがれ!』朝ドラヒロインの楽しさと、2545人から選ばれた責任「台本にはさんだ菅田将暉さんの言葉が支え」
- 伊藤蘭「娘・趣里の朝ドラ主演を喜んで、夫・水谷豊と〈ブギウギ見た?〉と確認し合う日々。もう少し余裕ができたら夫婦2人の時間も楽しみたい」
- 志尊淳「自己肯定感ゼロの闇の時代を10年間。1ヵ月ほぼ寝たきりの闘病生活で人生観が変わった。朝ドラ『らんまん』でファンの年齢層もひろがり」