「生活保護でパチンコ」は減った? 独自対策打ち出した3市のいま
「見守り条例」として今は市民に定着
生活保護とパチンコ問題に関する“先進市”とされる兵庫県小野市。受給者を対象とした全国初のギャンブル禁止条例ともいえる「小野市福祉給付制度適正化条例」を2013年からスタートしている。罰則制度はないものの、「受給者の責務」としてパチンコや飲酒での浪費を明確に禁じたうえ、パチンコ店に通い詰める受給者情報の提供を市民に呼びかけた。 「条例スタート前後は、多くの賛成意見とともに『監視条例』との批判も受けましたが、今では『見守り条例』だということが市民に定着しつつあります」。施行から3年が経った現状について同市の社会福祉課長はこう話す。 あまり知られてはいないが、当初から条例には日々の暮らしに困窮する「要保護者」に気づいた際には情報提供することという項目も盛り込まれ、3年間で寄せられた9件のうち2件について生活保護受給が認められた。一方、ギャンブル関連の通報は3年で5件にすぎず、事実関係を確認の上で生活指導はしたものの保護費の減額などは行っていない。 「条例が話題になったことから意識として受給者の足が遊技場施設から遠のいたのかもしれません」と同課長。「私たちは困窮している人には支援を行き渡らせるとともに、『ギャンブルで浪費するような受給者は小野市にはいません』ということを理念として条例で示したかった。情報提供は保護費削減を狙ったものではなく、実際この3年間で県内で下から2番目だった保護率は僅差とはいえ5番目になりましたから」と振り返る。 生活保護をめぐる別府・中津市の騒動は、小野市としても注視していた。「パチンコそのものが悪いというのではなく、過度な費消が問題だということ」と、同課長は生活保護法の条文内容が意味するところを再確認したという。
ギャンブルしか生きがいのない高齢者も
「私たち行政側は軸足を変える必要があるのでは。問題の本質は、ギャンブルにしか生きがいを見いだせない受給者を取り巻く状況にあるのではないか」。一連の騒動から2か月余りを経て、別府市の社会福祉課長はそう考えている。 撤回したものの、昨年度に同市が保護費を一部停止・減額した9人のうち6人は65歳以上の高齢者だった。保護受給者の年齢が65歳を超えると、ハローワークなどで職を求める「就労活動専念義務」の対象外となり、パチンコ店に入り浸っても「国が認めたのだから」と罰則はもちろん、指導すらも難しくなる。 「受給者の多くは『負い目』などから地域社会との結びつきが薄いのが実情です。生活保護という社会に必要な制度が白い目で見られないためにも、パチンコなどにおぼれる受給者を社会から孤立させないような対策が必要。一部の方は交通指導員などのボランティアに取り組んでいますが、ギャンブル依存を克服するとともに社会とつながることができるような施策を一歩ずつでも講じていければ」。高齢受給者ら一人ひとりとの面談を通し、同課長はそうした思いを強くしているという。 (フリー記者・本間誠也)