「生活保護でパチンコ」は減った? 独自対策打ち出した3市のいま
パチンコなどへの出入りをめぐって生活保護の停止・減額措置を取っていた大分県別府・中津市。その両市が国の指導で撤回を表明したのは今年3月のことだった。パチンコや競輪、競馬を理由とした保護費のカットは是か非か、この問題は全国的な論議を呼んだ。騒動が収まった今、2市の状況を探るとともに、3年前にパチンコ禁止を明文化した独自の生活保護関連条例を施行した兵庫県小野市のその後を追った。 ◇
「3月に大きな騒ぎになったせいか、その後は市内のパチンコ店や馬券売り場を回っても受給者の姿を見かけなくなりました。周囲の視線が気になるのでしょうか」と話すのは中津市社会福祉課の担当者。 保護率の高さが県内で断トツの3.2%に上る別府市も同じような状況で、それまで頻繁だった「パチンコ店に受給者がいる」「受給者がパチンコで勝ったことを温泉場で自慢していた」といった市民からの苦情は激減したという。
「保護費カットを撤回しないで」「受給者の自由」
別府市は昨年度、指導に従わずパチンコ店などに出入りを繰り返した9人に医療扶助を除いた保護費支給を一時停止。中津市も昨年度、文書指導に反して再度の入店が確認された4人に保護費から食費相当分を一時カットした。 「収入、支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り、その他生活の維持及び向上に努めなければならない」――。 生活保護法60条のこうした文言などが、別府・中津市による保護受給者への罰則処分の根拠とされた。ただ同法はパチンコなどを明確に禁じていないことから、厚生労働省は「支給停止や減額は不適切」との方針を示し、県は別府・中津市に是正を求めた。罰則の撤回が3月に報じられ際の反響は大きく、別府市には1週間で200件以上の電話とメールが寄せられた。中津市社会福祉課の担当部署は、当初の3日間は電話対応のみに終日忙殺された。
生活保護費は年を追うごとに増大し続け昨年度は国全体で3兆8000億円に。これに対し労働者の実質賃金は下降線をたどる中、全国から両市への電話やメールの9割近くは「受給者がギャンブルなんてとんでもない。停止・減額を撤回すべきではない」という内容だった。一方、生活保護支援組織や弁護士らは「保護費の範囲内で娯楽としての行為なら法律違反ではない」「保護費の停止・減額は受給者の自由侵害」との意見だった。