“新幹線一本足打法” JR東海、収益構造の特殊性
新幹線の収益率は非常に高く、営業利益率はJR東海が断トツの35.6%。通常、企業の営業利益率は10%でも優秀とされるところ、いかに新幹線の収益率が高いかが分かる。営業利益率でJR東日本は14.2%、JR西日本は10.6%で、赤字のJR北海道やJR四国は言うまでもないが、JR東海は東海道新幹線によって、JR各社の中でも抜群の利益率をたたき出している。
主眼は「早く・大量に」
新型コロナウイルスの感染拡大は、鉄道各社にも大きな影響をもたらした。東海道新幹線の4月と5月の利用率は前年比90%減、2か月で計約2200億円の減収となった。JR東海も大きな打撃を被った形だが、ある経済アナリストは「新幹線のビジネスモデルはものすごく収益率が高い。東海道新幹線を持っているJR東海は、利用客が5割、もしくは6割も戻れば黒字になるだろう」とみる。金子慎社長も7月15日の定例記者会見で「いつまでもこういう低レベルということはない。どこかの時点では相当程度回復する。これは期待というより、そういうことになるんだろうと思っている」と話し、余裕を見せた。 東海道新幹線の乗客の6割はビジネスマンとされる。平日の東海道新幹線に乗ると、客席はスーツを着た人でびっしり埋まっていて、車両の前側から見ると真っ黒だ。この情景からも分かるように、JR東海は東海道新幹線で出張するビジネスマンを早く、大量に運ぶことを経営の主眼に置き、注力してきた。 1987年の民営化以降、車両の改良などで東海道新幹線の速達性を上げるとともに、本数を増やし、2020年8月現在、東京―大阪間を2時間30分以内で走るのぞみは1時間に最大12本走り、1日に373本で、約48万人を輸送する。平均遅延時間は、自然災害などを含んでも1列車あたり0.9分という。国鉄時代の0系新幹線が、東京―大阪間に4時間かかっていたころと比較すると隔世の感がある。 東海道新幹線の利便性を磨き上げ、収益を向上させてきたのはJR東海の企業努力のたまもので、民営化の成果のひとつと言える。しかし、こうしたビジネスマンをターゲットに東海道新幹線で収益を上げることに特化した経営は、いきおい、その他のサービスは経営の合理化という観点からは「無駄」ということになる。