“新幹線一本足打法” JR東海、収益構造の特殊性
「遊び心」は排除
JR東海は、JR各社の中で鉄道ファンから最も評判がよくない会社として有名だ。これは、JR東海が鉄道会社の「遊び心」と言えるような営業活動に全く積極的でないことに起因している。 柘植康英・現会長が社長に就任する14年まで、JR東海はアニメとのタイアップ、ゲームの承諾を全くと言っていいほど行ってこなかった。これは、JR東海の「天皇」と呼ばれ、長く絶大な権勢を振るった葛西敬之名誉会長(今年6月に取締役を退任)の方針だったとされる。過去には、ゲーム内に自社の鉄道車両の登場を一切認めず、ゲーム会社と軋轢を起こしたこともあった。大手私鉄の車両が軒並み登場する中で、JR東海の車両だけ登場しない、というゲームもあった。柘植社長時代以降は、18年放送のアニメ「新幹線変形ロボ シンカリオン」で過去のCMクリスマス・エクスプレスのパロディを承諾。16年公開の「シン・ゴジラ」では、新幹線に大量の爆薬を積んでゴジラに突っ込ませるというシーンもあり、最近では方針転換が行われたともっぱらの噂だ。 また、JR西日本の500系新幹線が、東海道新幹線から撤退したことの理由も、鉄道ファンがJR東海に残念な思いを抱くエピソードとして有名だ。
500系はドイツの工業デザイナーが設計、戦闘機のような先頭車両、銀と青の配色の車両は「新幹線の中で最も美しいデザイン」と評され、ファンの間で人気の高かった車両だ。しかし、先頭車両の客用ドアが一つしか無く、乗り降りに時間がかかってダイヤに遅れが出がちという短所があった。定刻運行にこだわるJR東海にとって、500系は疎ましく、10年には東海道新幹線の運用から撤退、現在は山陽新幹線区間の「こだま」として走っている。 JR各社との関係がよくないこともつとに知られる。特に1997年にJR東海が独自に発売した新幹線回数券「TEXきっぷ」問題は波紋を呼んだ。以前からJR各社が全国の窓口で発売していた回数券「新幹線エコノミーきっぷ」は特定都区市内制度を適用し、割引されていたのに、TEXは割引を適用しなかったため、乗り越し駅でトラブルが続出。JR東日本やJR西日本はTEXきっぷの見直しを求めたが、JR東海は応じず対立した。結局、2年後に二つを統合した「新幹線ビジネス切符」ができるまで混乱は続いた。