「ソフト老害という言葉が一人歩きしている」鈴木おさむが感じたメディアと言葉の怖さ
「日曜劇場で自分を演じるのは誰?」会議中に自分を俯瞰で見ることが大事
――どうしてソフト老害が生まれてしまうのだと思いますか。 鈴木おさむ: 組織を悪だとは思わないですけど、組織のことを考えることによって自由さが失われることがありますよね。例えば、社長を盾に「社長は多分これ嫌いなはずだから」とか「社長はこれ面白いと思ってないから」ってシャットアウトする人がいるんですけど、実はそんなことなかったりするんです。自分が社長という存在に嫌われたくないから、その前でシャットアウトしちゃってるみたいな、間違った気のつかい方が一番の原因のような気がします。 チーフ作家をやっていると、あと3週で番組が終わるか終わらないかの難しいジャッジをしないといけないときがあったりする。でも、それを若いディレクターには言わないほうがいいだろうと、気をつかいがちなんです。でも、よくよく考えると、それを全部言ったほうが絶対いいんですよね。上の人が「これはみんなが不安になるから」って気をつかう美学があるじゃないですか。日本特有なのかな。それなのに「みんなの気持ちわかるぜ」って言ってるのがすごい嫌なことだなって、自分自身の経験から思いました。 ーーソフト老害にならないためには、どういった視点を持つことが大事だと思いますか。 鈴木おさむ: 俯瞰で見たときに、「自分は何者なのか」を意識するのが大事だと思います。会議の場において自分が主役じゃなかったときに、「これが日曜劇場の『半沢直樹』だったら、俺の役は誰だろう」って考えるんですよね。「自分は堺雅人さんじゃないな、じゃあ香川照之さん? それとも古田新太さん?」っていう具合に。自分が今やっていることって「日曜劇場のドラマだったら誰が演じるのか」を考えて、その役を演じると意外とラクだと気づきました。 ーー一方で、意見をぶつけてくる若者に対して、上司は組織や会社のことを考えて、説得しなければいけないケースもありますよね。 鈴木おさむ: 「イタさ」のある若者の中から、才能のある人が出てくると思うんですよね。イタさの履き違えを見極めてあげたり、却下するんじゃなくてイキリ立っているようなやつを先導してあげたりとか、プロデュースしてあげたほうがいいのかもしれません。そのイタさをいかに才能に変えてあげるかっていうのも、こっちの手腕だったりすると思うので、そこが「ソフト老害」にならないためにすごく大事なのかもしれないですね。 ----- 鈴木おさむ 1972年、千葉県出身。放送作家、脚本家。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。『SMAP×SMAP』をはじめ、バラエティを中心に多くのヒット番組の構成を担当。映画・ドラマの脚本や舞台の作演出、小説の執筆なども手がける。2002年、交際期間0日で森三中・大島美幸さんと結婚したことも話題に。2023年10月、2024年3月末で放送作家業と脚本業から引退することを発表した。 文:優花子 (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)